1. |
わが国の発展、それに伴う国際的相互依存の拡大・深化と国際的責務の増大から、国際理解の推進とわが国の文化と伝統の尊重(現行学習指導要領)は高等学校において欠くことのできないものとなり、それにしたがって「地理歴史」が設置されてきた。平成15年度から実施される学習指導要領においても、この考え方は継承され「国際社会に生きる日本人としての自覚」の育成が基本方針の第1項に掲げられている。地理歴史は、高等学校教育の中で基本的な学習目標と関わる教科である。わが国の大学は、グローバル化の中で学術の創造を担い、同時に国際社会と高度に発展した産業社会に貢献する人材を育成する課題に取り組んでいる。このような使命を達成する上で、大学に入学する学生が高等学校において世界の歴史と日本の歴史、地理を学ぶことはなおさら重要な意味をもっている。わけても人文・社会科学系の学問と教育にあっては、地理歴史は、理科系における物理、化学、生物、地学に匹敵する必須の基礎科目であり、中学校、高等学校における教育の積み重ね無しに大学における人文・社会科学系の教育一般は成立し難い。そのため、人文・社会科学系大学にとって地理歴史の科目群は大学教育を受ける学習準備として必ず履修してほしい科目群である。
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2. |
国立大学協会が今回「地理歴史」からの2科目選択を要望しているのは、上に述べたことに基づいているが、公民を軽視しているわけではない。高等学校において公民を履修することは高等学校の基本的教育目標達成の上からも徹底すべきである。しかしながら、公民の科目群についての位置づけは高等学校学習指導要領においても「地理歴史」とは異なっており、また大学教育との関係も地理歴史とは異なる側面を有する。また、多くの人文・社会科学系大学が地理歴史からの2科目選択を要望しているが、それは公民からの選択を希望する大学を排除するものではない。
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3. |
地歴からの2科目選択はできるだけ早い時期での実現を望みたい。文部科学省の大学入学者選抜実施要項では、入試の科目変更等は2年前に周知させるという定めがあるが、可能ならば3年後の2005(平成17)年度からの実現を望みたい。しかし、準備に時間を要するということであれば、遅くとも新教育課程入試の始まる2006(平成18)年度に実現させたい。
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4. |
理想は「地理歴史」教科のすべての科目組み合わせを受験可能にすることであるが、現行の2日日程の中ではその達成は到底困難と思われる。そのため、試験のコマ数を増やさず、地理歴史と公民の2教科を混合して2グループとし、それぞれのコマから自由に1科目を選択できる方式を採用することが一つの現実的な方策と考えられる。科目組み合わせは限定されるが、たとえば、下記のグループ分けの場合、少なくとも世界史と日本史、世界史と地理の組み合わせは受験が可能となる。
地歴・公民(1): |
世界史A、世界史B、現代社会 |
地歴・公民(2): |
日本史A、日本史B、地理A、地理B、倫理、政治・経済 |
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