福島の今を伝えるシンポジウム「ほんとの空が戻る日まで」を開催 【福島大学】
3月8日(日)、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター(FURE)は、立命館大学朱雀キャンパスにおいて、シンポジウム「ほんとの空が戻る日まで ―東日本大震災及び原発事故からの福島の闘い―」(共催 立命館大学、国立大学法人大阪大学 後援 文部科学省、復興庁、福島県他)を開催した。
このシンポジウムは、福島と歴史の繋がりの強い京都で、福島の現状を伝え、複合災害で苦しむ福島を今一度考えていただく契機とし、福島の経験を伝えることにより防災の意識を高めていただきたいと願い企画された。
開会の挨拶において中井勝己学長は「福島県は4年経った今でも12万人が避難生活を余儀なくされている。今後も、住民が望む本当の空が戻る日まで被災地にある学術機関としての使命を果たしていきたい」と力強く語り、続いて、吉田美喜夫立命館大学学長は「立命館は東日本大震災直後、震災の復興に息長く貢献していくことを誓った。これまで東北へ送り出した学生は1,000名を超えている。先日訪れた福島で、所々で震災の爪痕に触れ、人々の無念さに身体が震えた。ともに未来をつくるパートナーとなり、復興に向けて教育機関としての使命を果たしていきたい」と語った。平野俊夫大阪大学総長は「大学は,100年後の22世紀にも日本全体が輝き、『ほんとの空』を笑顔で見上げられるよう、教育と学問の府であるという大学の本来の姿、基本に立ち返ることが必要であり、本質を見極め、次の社会を作り上げることができる人材をしっかりと育成するという責任がある」と語った。
基調講演には、堀 潤氏(ジャーナリスト)を迎え、「インターネットなどを使って、誰もが簡単に情報を発信し、得られる時代。“福島”をひとくくりのイメージでとらえず、『言葉の因数分解』を繰り返して、ひとつひとつの異なるエピソードに目を向けてほしい。そして、ぜひ現地に足を運んで福島の魅力に触れて、それをまた誰かに発信しいってほしい」と、自ら福島に通い続けて取材をした経験をもとに熱く語った。
その後、FUREから、「福島大学の復興支援活動」や「福島県における放射能の現状」、「食の安全と農業の再生に向けた闘い」、「こども支援を通して見えてきたこと」について報告があった。
最後に、開沼博FURE特任研究員がコーディネーターとなり、遠藤勝裕氏(日本学生支援機構理事長)、高橋美奈子氏(福島市飯坂温泉松島屋旅館女将)、佐藤彰彦福島大学FURE特任准教授、サトウタツヤ立命館大学文学部教授、久保壽彦立命館大学経済学部教授によるパネルディスカッションを実施した。パネラーは、それぞれの立場や経験から福島の当面の課題や解決策について報告を行い、その後一般参加者も交えた活発な意見交換が行われた。
当日は、福島から関西へ避難されている方、岩手県や山形県、徳島県、岡山県など遠方から318名の来場者が会場に訪れた。
参加した大学院生は「2011年3月11日はたまたま横浜にいて、震災を経験した。その後、京都に帰ると何事も無かったかのような日常で安心したと同時に東日本とのギャップに驚いた。しかし、4年経った今、震災を経験した人でもその記憶が薄らぎつつある。経験していない人であればなおさら。現地の人々の話を聞いたり、現地に行く機会を増やし、風化を防がなければならないと感じた」と感想を述べた。また、高校2年生は「福島に関わってきたが、今日聞いたことで知らないこともたくさんあった。学んだことを、これからもっと発信していきたい」と意気込みを述べた。
写真:
左上 福島大学・中井学長からの挨拶
上中 立命館大学・吉田学長からの挨拶
右上 大阪大学・平野総長からの挨拶
左下 第I部 基調講演・堀氏
下中 第II部 現状報告の様子
右下 第III部 パネルディスカッション