会長
会長挨拶
会長 永田 恭介(筑波大学長)
国立大学は、創設以来、世界最高水準の教育・研究の実施や重要な学問分野の継承・発展、全国的な高等教育の機会均等の確保、グローバル人材の育成といった役割を担ってきました。
現在、日本、そして世界において世界規模での地政学的リスクが増大し、大規模災害が頻発しています。このような状況において、世界的な様々な課題への抜本的な解決策を各国が模索しているなか、日本が主導権を握る場面は少なく、世界における存在感を急速に失いつつあります。また、国内においては経済成長の停滞、想定を上回るスピードで進む少子高齢化と社会保障の持続可能性確保、地域間格差の解消、持続可能なエネルギーへの転換など、我が国の将来に大きく影響する課題が山積しています。
そのような状況において、国立大学は我が国の研究力の源そのものであること、各地域を支える核であること、そして世界の人たちにとって魅力のある大学になり、世界とつながり、交流する場であることが求められています。現在国立大学は、どの地域でも高いレベルの教育にアクセスできるように各都道府県に1校以上配置されており、向学心に燃えた人を育てよう、という共通の理念があります。各地域の文化・社会・経済を支える拠点であり、産業、医療、福祉、教育などに責務を負っていることを自覚しています。今後は、共通する部分はシステム化した「国立大学システム」を確立したいと考えております。国立大学は社会的共通資本であるという認識の下で、我々のアドバンテージを最大限に活用し、国立大学だからこそできる連携を行い、「国立大学システム」をうまく活かして国立大学全体で国民に対して応え、世界にアピールしていく必要があります。
2004年に国立大学が法人化して今年で20年という節目の年を迎えました。この20年間を振り返り、我が国にとって大学とは何か、そして目まぐるしく変化する社会に対して、国立大学はどのように貢献していくのかということを考えなければなりません。新たな社会状況の変化を受けて、これからの国立大学の在り方について、変えるものと変えてはならないものを見極め、不易流行の原理をもとに改めて問い直す時期を迎えています。これから先20年後の世界、日本の未来を想像し、国立大学は何をしなければならないのかを具体的に考え、明るい夢を語ってまいります。そして社会の中で役割を果たすことだけでなく、社会そのものを支えていく役割を担ってまいります。
様々な地域・社会の発展に貢献するとともに、知の循環と社会への還流を生み出し、新たな価値の創造と新しい社会基盤の構築を先導する役割を果たす国立大学を、国立大学協会は支えてまいります。引き続き、ご支援を賜りますよう、お願いいたします。