58号 Challenge!国立大学 特集【コロナ禍の対応とニューノーマルへの展望】
※各事例は2020年10月1日時点の情報
帯広畜産大学
どのような環境でも、全学生があらゆる授業をオンライン受講できる体制を構築
教育 遠隔授業 実験実習
帯広畜産大学では、実験実習も含め、前期の約300科目全てをZoomなどによるオンライン配信で実施した。授業開始までに全学生がオンラインで受講できる体制を整えるために、授業開始日を5月11日に遅らせ、全ての学生の所在地とネットワーク環境の調査を行った。環境が整わない学生に対しては、Wi-FiルーターやPCの無償貸与、人数を限定して大学構内の空き教室でのオンライン受講を認めるなどの対策を実施。その他、大学構内及び学生寮のネットワークの強化に加え、オンライン受講に支障があった場合は授業の録画動画による受講を認めるなど、どのような状況にあっても全学生がオンライン受講できる体制を整え、大きなトラブルなく授業を行うことができた。
その結果、授業評価アンケートにおいても遠隔授業の継続を望む学生が多く、学生・教員双方から高い評価を得た。10月1日からの後期授業においても約300科目すべてをオンラインで配信。1年次科目については対面授業を再開したが、オンラインと併用することで密を避けた授業を実現している。また、補講等に活用するためにオンデマンド配信サーバを整備し、教員の承諾が得られた科目については授業動画をオンデマンド視聴することを可能としている。
配信用に農学実習の場面を撮影する教員
宮城教育大学
質の高い遠隔授業の実現に向け、多角的な取組を展開
教育 遠隔授業 学生支援 教員養成
宮城教育大学では、遠隔授業の実施にあたり、情報活用能力育成機構が中心となってGoogle Meetなどのビデオ会議アプリケーションの利用法、Google Classroomによる授業構成について講習会を実施。さらに質の高い授業の実現を目指し、情報交換会の開催や情報交換のためのSNS型掲示板の学内設置等、大学全体を横断した取組を展開。各教員の情報活用能力の向上に寄与した。教員個人としての取組と大学全体の組織的な取組が融合することにより、前期授業期間は大きな障害もなく終えることができた。
また、聴覚障害のある学生への支援について、「しょうがい学生支援室」が中心となり、リアルタイムでのオンライン授業において遠隔情報保障システム「T-TAC Caption(筑波技術大学)」を活用し、ボランティア学生が自宅から情報保障支援を実施。オンデマンド配信型授業においては、授業担当教員や支援室職員協力の下、字幕を付与し配信する支援を行った。
その一方で、遠隔授業対応の中で発生したトラブルに対処するために、情報活用能力育成機構に所属するICT技術支援学生(テックサポーター)によるリモートサポートを充実させ、円滑な遠隔授業の実施に寄与した。
筑波技術大学
障害学生に対する同時双方向型の遠隔授業を実施
教育 遠隔授業 学生支援
聴覚障害者・視覚障害者のための大学である筑波技術大学では、学生の障害特性に応じた遠隔授業を行っている。多くの大学がオンデマンド型(教材提供型)授業を行う中、コミュニケーション手段の確認や質疑応答時間の確保のため、同時双方向型としているのが特徴である。
同大学では、学生数名に対して担当教員を配置するAA体制のもと、事前に家庭での通信環境の調査及びPC・ルーターなどの貸出、複数回の通信テストを実施。そのうえで、聴覚障害のある学生には、手話や文字通訳を用いた双方向型授業を行っている。教員・学生ともにカメラはオンの状態を基本とし、質問があるときは画面越しに手話やチャット機能等を利用している。また、視覚障害のある学生には、電子ファイルでアクセスできない立体コピー(触図)、点字教科書、拡大文字資料等の授業に使うテキストを、学生個々の状況に応じて郵送。機器の設定、使用方法も電話やメールで個別に指導し、視力がなく音声ソフトを利用している学生には、特段の配慮と支援を行っている。
遠隔授業においては、声の代わりに指差しで伝えるなどの対面授業での工夫が生かせない一方、学生が手元で映像を拡大して見やすいことなどが利点となっている。
情報・システム研究機構
大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウムを開催
教育 遠隔授業 研究 情報共有
情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)では、本年3月24日の文部科学省高等教育局通知「令和2年度における大学等の授業の開始等について」を受け、大学等における4月以降の遠隔授業等に関する情報をできるだけ共有することを目的に、3月26日の第1回以降、週1回から隔週のペースでサイバーシンポジウムを継続的に開催している。
同シンポジウムでは、遠隔授業の先行的事例の紹介や情報交換、著作権法の解釈や法改正、欧米、中国など諸外国の大学における事例、医学部や工学部等での実習方法、オンラインによる学生生活支援、また最近では対面授業とのハイブリッド事例も取り上げるなど、時々刻々と提起される大学等における遠隔授業に関わる焦眉の課題をテーマに幅広い内容の講演を行っている。
参加者は大学・高等教育関係者が中心で、第1回は約300名であったが、回を追うごとに増加し、5月29日の第9回には2,755名を数えた。第17回までの延べ参加者数は約2万5,000名、延べ講演本数180本超、アーカイブ映像視聴回数15万回超と、大学等のコロナ禍における授業等の取組に関わる情報共有を推進した。今後もこの活動を継続していく予定である。
北海道教育大学
在宅学習教材として「教育実習前 CBT」を活用
教育 授業 教材開発 教育実習
北海道教育大学では、検定と支援アンケートから成る「教育実習前 CBT(Computer Based Testing)」を開発した。これは、教員として身に付けておくべき基礎的な知識に加え、学校現場に生ずる実践的問題への対応や指導方法を学べるものとなっている。学生が自宅のPCやスマートフォンを使えば学外からも利用できることから、コロナ禍においては在宅学習教材の一つとして活用した。
また、その発展型である「教育実践力向上 CBT」は、現職初任者研修への対応も念頭に置いて編集された。今年度、同CBTを北海道及び札幌市教育委員会に提供し、コロナ禍で在宅勤務をしている初任者の研修教材として活用してもらった。利用者からは「選択肢を読んで自分が疎かにしていた部分に気づいた」「危機管理は今まで触れる機会が少なかったので参考になった」「答えは一つではなく、様々な選択肢(実践)があることを学んだ」といった肯定的な意見が多く、「実際の現場で多様な指導方法等があるというイメージが広がったか」の質問では91.2%の肯定的な回答を得た。
今後、同大学では e-learning と組み合わせたCBTの開発を目指し、アフターコロナにおける有用な学習ツールとして教員養成教育と教師教育の質向上を図っていく。
福井大学
「実践研究福井ラウンドテーブル 2020 SUMMER SESSIONS」をオンラインで開催
教育 授業 オンライン 研究
福井大学・奈良女子大学・岐阜聖徳学園大学連合教職開発研究科は、ラウンドテーブル形式で実践事例を語り合う「実践研究福井ラウンドテーブル」を年2回実施している。本年 6月20日・21日にはその「ヴァーチャルサマーセッション」を開催し、教育関係者に加えて小中高生も約180名参加し、全体で延べ750名規模となった。
1日目の「実践研究福井ラウンドテーブル」では、6テーマのゾーン(学校、教師教育、教員養成、コミュニティ、授業研究、探究)に分かれ、ヴァーチャル・ポスターセッションやグループ対話等を実施。特に昨今のコロナ禍を乗り越える教育のあり方について熱心な対話がなされた。
2日目には「ラウンドテーブルクロスセッション」として、ゾーン参加者が 交ざり合う6名程度のブレイクアウトルーム形式で、互いの実践の聴き合い、意見交換を行った。
オンライン開催により、北は北海道 ・ 札幌から南は沖縄県 ・伊良部島、さらにはアメリカやシンガポールなどの教師等、幅広いエリアの人々が参加。今回の「実践研究福井ラウンドテーブル」では、世代を超えた新しいグローカルな対話の可能性を示すことができた。
神戸大学
オンラインによる With COVID-19 シンポジウムを開催
教育 情報発信 研究 医療
神戸大学では、新型コロナウイルス感染症対策に関する取組を集約し、同大学のHPなどを通じて学外へ積極的に情報発信している。
その一環として本年7月、With COVID-19 シンポジウム「新型コロナと共存する社会を考える」をオンラインで開催。本シンポジウムは3つの講演と、パネルディスカッションで構成され、当日は260名の参加(最大同時接続数)があった。
講演では、新型コロナウイルス感染症の流行状況、症状、診断法、治療法、抗体調査などの紹介をはじめ、経営学の分野から新型コロナウイルス感染症による企業レベル、個人レベルの影響について解説。また、企業や個人へのアンケート調査に基づく分析結果の紹介、新型コロナウイルスと共存する社会の構築に向けて同大学が取り組む約50 の研究テーマの紹介が行われた。
パネルディスカッションでは、医学、経済、技術、文化、行政など多角的視点から新型コロナウイルスと共存する社会について議論がなされ、人とのつながりにおけるオンラインとオフラインの融合の必要性等が話題として挙がった。
今後も同大学の多角的な視点による英知を結集させて、次の時代を切り拓くことに貢献することを目指す。
大阪教育大学
ICT環境を整備するとともに、感染拡大防止の取組をHPで公開
社会貢献 地域連携 感染防止 ガイドライン
大阪教育大学では、2017年度学部入学生からPC必携化、学習管理システムの導入等のICT環境整備を実施している。教員に対しては、オンラインによる FD(Faculty Development)の実施、レベル分けアンケートによる教員間の協力体制構築やオンラインサポートデスクの開設などを行い、本年 4月20日からオンライン授業を開講した。その他、学生の状況を把握し、改善・支援するために学習・生活調査を複数回実施し、学生の声を積極的に取り入れている。
その一方で、附属天王寺小学校では、感染拡大防止のための取組として、学校再開前に行った準備内容をHPで随時公開。これらの記事を作成するにあたり、「どの学校でも取り組むことができるかどうか」という視点から「手に入れやすい材料を使う」「予算的に安価なものを利用する」などを工夫した。
学校再開後も新たな課題に対応し、その様子を紹介している。また、これらの取組については、同校の研究会に参加した他校の教員に案内メールを個別に送付。4月以降、取組に関わるページの閲覧数は総数で 2万6,965ビュー(8月31日現在)。オリジナルの手洗いミュージック、学校再開のためのガイドライン、新しい学校様式としての軍手利用ほか多彩なコンテンツをHPで公開した。
北海道大学
唾液によるPCR検査の実現など社会に貢献する研究を実施
コロナ研究 PCR検査 社会貢献
北海道大学病院の豊嶋崇徳教授らにより実現された唾液による新型コロナウイルスのPCR検査は、検体採取時の医療従事者の感染リスクや負担を大幅に軽減させる画期的な研究成果である。本手法の登場はPCR検査数の増加に貢献しただけではなく、検体として従来の鼻咽頭拭い液に加えて唾液が使用可能となったことで、場面に応じた検査の実施を実現させるなど、医療現場に大きな貢献を果たしている。
また、同大学大学院工学研究院の北島正章助教は、下水疫学調査が新型コロナウイルス感染症の流行状況把握に有用であることを提唱する世界初の総説論文の発表に加え、日本国内で初めて下水試料から同ウイルス RNA の検出に成功するなどの研究成果を上げており、特定の地域における感染拡大や収束状況の把握等への貢献が期待される。
北海道大学ではこのほかにも、現場において20分以内で抗体検査ができる持ち運び可能な検査装置の開発、塩野義製薬株式会社との新型コロナウイルス株を用いた創薬研究、同ウイルス感染者に見られる強い炎症状態に係る最新の知見をまとめた総説論文の発表など、社会に貢献する研究を数多く行っている。
九州大学
カイコを利用したワクチン候補となるタンパク質の開発に成功
コロナ研究 ワクチン 社会貢献
九州大学は、九大発ベンチャー「KAICO 株式会社」と共同で、新型コロナウイルスのワクチン候補となるタンパク質の開発に成功した。
同大学の農学研究院は、100年以上カイコの飼育研究を続ける世界最先端のカイコ研究拠点である。同研究院の日下部宜宏教授は、体内でワクチンの原料となるタンパク質を大量に作る特殊なカイコを発見。2018 年には、福岡市にカイコを利用した組換えタンパク質発現の技術等、同大学の技術をもとに「KAICO株式会社」が創業し、共同でワクチンを研究開発している。
新型コロナウイルスの表面にはスパイク形状のタンパク質があり、これがヒトの細胞の表面にあるタンパク質と結合して感染すると考えられているが、カイコによるワクチン開発の技術を用いることで、それと同じ構造のタンパク質を人工的に作ることに成功した。
今後、同大学薬学研究院との共同研究によりワクチンとしての基本性能を評価して、高性能ワクチンを作る研究を加速し、また企業等と連携して臨床試験を目指す。カイコによるワクチン開発は、より安価に大量生産できる可能性が高く、途上国への貢献も期待される。
東京工業大学
大学保有の131件の特許を無償開放し、深刻な影響を受けた社会の再起動を支援
研究支援 特許 社会貢献
東京工業大学では、 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に起因する深刻な影響を受けた社会の再起・活性化を支援するために、「社会再起動技術推進事業(Social Rebooting Technology Initiative)」を立ち上げた。その第一弾の活動「お役に立てれば(HopeThis Helps : HTH)プロジェクト」では、同大学が保有する特許131件を一定期間、無償で開放することとした。
今回対象とした特許には、プラズマを活用した包装容器の殺菌技術、膨大なプレゼンテーション資料に対して利用者に検索結果を効率的に提供する e-learning(遠隔学習システム)技術、要介護者及び介護者を支援するためのロボット技術などが含まれる。これらをオープンイノベーションで活用することにより、COVID-19対策に寄与する事業化の加速や新たな活用方法を通じ、社会の再起動に貢献することを目指している。
COVID-19の影響は長期化が予想され、特許を利用する事業は、今後の回復過程において有効性が期待できるものが多くあると考えられる。社会再起動技術推進事業では、COVID-19による社会への影響の克服に役立つ活動を、今後も持続的に展開していく予定だ。
一橋大学
海外の大学院に在籍し、日本に一時帰国中の学生の研究を支援
研究支援 学生支援 海外
一橋大学経済研究所では、文部科学省共同利用・共同研究拠点として、学外研究者が参加する研究プロジェクトの実施をはじめとする各種事業を行っている。
海外の大学院で経済学を専攻する博士後期課程の学生が日本への一時帰国を余儀なくされている状況を踏まえ、これらの学生に参加型事業への応募を積極的に促したところ強い関心を集めた。本年8月時点で、米国、フランス、英国及びカナダの大学院に在籍する学生9名が同事業に採択され、ShortTerm Visitorとして来校。研究発表や共同研究等を、経済研究所教員のみならず学内外の研究者とともに行っている。採択された学生には、経済研究所内の「密」を避けた研究室や、希望者には大学の宿泊施設も提供し、安心して研究が進められる環境を整えた。
それぞれの研究内容や今後の活動に関して、学生の間で積極的な情報交換が行われており、「通常であれば、同じ経済学でも分野が異なる他大学の大学院生とはなかなか話をする機会がないが、今回の経済研究所の措置により横のつながりができて良かった」との声も聞かれた。
弘前大学
困窮する学生に対する緊急支援プロジェクトを実施
学生支援 経済 地域活性化支援
弘前大学では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う学生の経済的困窮への支援と健康維持を目的とし、学生食堂において1食450円相当の夕食を100円という超低価格で提供した。この「100円夕食」は本年6月5日から前期授業終了日である8月6日までの間、平日300食を日替わりで用意し、料金との差額350円は、卒業生、地域の方々、地元企業、本学教職員などによる弘前大学基金への寄附金を活用した。学生からは「おいしい」「100円で夕食が食べられるのは助かる」などの声が多く聞かれた。
また、学生の食事支援と地元飲食店の活性化を目的とし、市内飲食店で利用できる 5,000円分の食事券を本学学生に2,000円で販売する「プレミアムお食事券」プロジェクトを実施した。この食事券は7月15日から12月31日まで利用できるもので3,000セットを用意。差額 3,000円のうち 2,000円は弘前大学基金を活用し、1,000円は弘前商工会議所が地元自治体の補助金を活用して支援を行った。
学生の健康不安と経済的不安、地元飲食店の経営危機という困難な状況を打破するため、同大学と地域が一体となって取り組んだ事業である。
福島大学
生活困窮学生へ食料支援物資を配付
学生支援 経済 支援物資
福島大学では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛やアルバイトなどの収入減を余儀なくされた学生に対し、同大学の同窓生、地元企業、市民から提供された食料品などの多くの支援物資を2回(第1回:5月20日、第2回:6月24日)に分けて配付した。
特に第2回目の配付は、若手事務職員の自己啓発研修の一環として行い、若手職員による支援物資対応チームが中心となり、支援物資の仕分けや配付方法、配付学生の募集などを企画・実施した。
結果、総数760名(第1回:435名、第2回:325名)の学生に支援物資を配付。物資を受け取った学生からは「人と人の支え合い、助け合いを強く感じた」「支援を通じ、企業や福島の方々、OB・OGの方々の温かさに触れて、元気までいただいた。本当に感謝の気持ちでいっぱい」「コロナウイルスの影響でアルバイトもなくなり、食費を切りつめて生活していたのでとてもありがたい」といった感謝の声が多数届いた。福島大学では、それらを集約し、お礼状とともに支援に協力いただいた人々へ送付した。
同大学は、改めて地域に存立する意味を痛感し、この恩に報いるためにも、今後も学生への支援を続けるとともに、地域に貢献できる人材育成に努めていく決意を表明している。
岡山大学
生活に困窮した学生と地域の飲食店、その双方を応援
学生支援 経済 地域活性化支援
コロナ禍の影響が深刻となる中、岡山大学では学生が主体となって、学生の食と地域の活性化を図るプロジェクトを実施した。
同プロジェクトは、飲食店から提供された弁当50食を、学生が経済的苦境に立たされている他の学生に無料で配布したことからスタート。この活動を知った岡山大学は、資金面でのサポートを決定。3人の学生が中心となり、「コロナがなんじゃ! WIN & WIN 学生プロジェクト 岡大生の食支援 × 地域飲食店の活性化」プロジェクトを立ち上げた。
6月1日~12日の平日に、岡山大学津島キャンパス周辺の9店舗と連携し、1日あたり300~500食を用意。計3,900食を集まった学生に配布した。会場の準備から弁当の配布まで学生自らが実施した同プロジェクトでは、あえて配布対象を制限せず、金銭面で困窮する学生だけでなく、精神面で不安を感じている学生のサポートも目指した。
企画した学生らは、「保護者の方からもお礼のメッセージをいただいた。新入生など何人かが、もらう側から配る側になって協力してくれたことも良かった」と話す。一方、協力した店舗は、「長年、岡大生に支えてもらったお店なので、ここで役に立ちたいと思った」と語る。 学生と地域、双方のニーズに合った、まさに「Win-Win」のプロジェクトとなった。
徳島大学
新しい語学・異文化学習のかたち、オンラインでの海外留学体験
学生支援 経済 オンライン留学
徳島大学は、新型コロナウイルスの影響で夏期海外短期留学プログラムを中止したことから、オンラインでの研修プログラムを実施した。
1つ目は、米国南イリノイ大学の英語・アメリカ文化研修で4週間のプログラム。プログラム開始前に同大学関係者と徳島大学の参加学生が一堂に会してキックオフミーティングを開催し、参加学生の動機付けを強めた。本プログラムでは講義型の授業に加え、小グループに分かれてのディスカッション、地域の人たちとのオンラインでのゲームなども取り入れている。また、韓国語・韓国文化研修は韓国の慶北大学校、中国語・台湾文化研修は台湾の淡江大学とそれぞれ共同で実施した。いずれも2週間のプログラムで、学生交流の時間を毎日1時間設けた。学生の経済的負担を減らすために、全てのプログラムで授業料の半額程度を徳島大学が支援した。
大学の実習などがあるため留学できない、金銭的に難しいという学生も、自宅で出席できるこのプログラムには参加することができ、結果として短期研修プログラムへの参加者は大幅に増えた。本オンライン研修後もオンライン交流を継続することや、コロナ収束後に実際に現地大学へ行って「オフライン」で交流することを検討している。
高知大学
地方創生推進士が、地域と学生をつなぎ、学生が支え合う取組で活躍
学生支援 経済 地域活性化支援
地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的に文部科学省が実施する「地方創生推進事業(COC+)」。高知大学では、同事業により誕生した、地域への理解と愛情を深め、高知などの地域で働き貢献したいとする「地方創生推進士」の学生たちが、コロナ禍において活躍している。
本年4月以降の主な活動は、「新入生のためのオンライン相談会」「学生の生活困窮状況アンケート」「高校生向け、学校について話そう」「企業と学生のオンライン交流会」「農業体験を収入減少学生に紹介」「高知県高校生地域創生士と交流」「留学生・大学生に食料支援」等。その半分以上で、県内の経営者や会社役員等と学生が協力し合い活動を行った。
「留学生・大学生に食料支援」では、教職員と学生が協力し合い、地域の方々から提供された食料品を生活困窮学生へ配布した。
多数の「地域と学生をつなぐ」「学生が学生を支える」活動が短期間に次々とスタートできた背景には、キャンパス近くにある県内企業と学生の交流カフェ「One step」にて、地方創生推進士らが手掛けた交流イベントなどの実施がある。学生と地域が交流を深める中、強い信頼関係が緊急対応の基盤となった。
熊本大学
Leave No One Behind - 誰一人取り残さず、学びを止めないための学生支援
学生支援 経済 感染対策
熊本大学では、本年4月21日から一部遠隔授業を開始し、6月1日からは対面授業を部分的に開始した。遠隔授業の実施にあたっては、WEBセミナーやヘルプデスクにより教職員のフォローを行うとともに、全学生の自宅での通信環境を調査し、PCやルーターの貸出も行った。対面授業の実施にあたっては、マスクの着用、建物入口での検温、消毒液の設置、十分な換気、座席間隔を最低1メートル空けるなどの基本的な感染予防策を実施するとともに、机に貼付された二次元バーコードをスマートフォンで読み込むことで学生がいつどこに座ったかを記録・特定できる仕組みの構築等を行った。
また、新型コロナウイルスの影響により生計維持者の収入減や学生本人のアルバイト等の収入減等によって生活に困窮する学生195名に対して、月額10万円×2カ月分の緊急修学支援を行った。
「誰一人取り残さない (Leave No One Behind)」と「学生と教職員の安全と学びを止めない」を基本的な考えとして、対策を行っている。
東北大学
独自の「緊急学生支援パッケージ」により学生を多面的に支援
学生支援 総合ケア 新入生 経済
本年4月に東北大学は「緊急学生支援パッケージ」を創設し、新型コロナウイルス感染症の拡大により様々な制約を受け厳しい状況にある学生に対し、物心両面にわたる多面的なサポートを行っている。
経済面では学生の困窮状況に応じ、約4億円の支援を実施。「国の支援よりもいち早くサポートをしてくれて助かった」「学業を続けることができる一助となった」といった声が支援を受けた学生たちから寄せられている。
心のケアでは、コールセンターやオンライン相談に加え、学部1年生を対象にした学生によるピアサポーター制度等、多様なツールでの相談体制を充実させた。また、卒業生など学内外から寄せられた「応援メッセージ」をもとに「学生応援動画STAND BY YOU」を公開した。
教育支援では、学生に対するWi-FiルーターやPCの無償貸与のほか、オンライン授業タスクフォースを設置し、教員のオンライン授業のアドバイスや事例などを紹介するセミナーの開催や特設ウェブサイトの開設など、情報の共有と発信に努めている。
東北大学は、今後も学生一人ひとりが安全・安心に有意義な学生生活を送ることができるよう全力を尽くしていく。
豊橋技術科学大学
学生に向けて「学長講話シリーズ~学生へのエール~」を連載
学生支援 総合ケア メンタルヘルス
豊橋技術科学大学では、外出自粛や授業延期が続く中、学生の不安を軽減し、心に届くエールを伝えようと、寺嶋一彦学長による「学長講話シリーズ~学生へのエール~」を大学HPに掲載。本年4月より5週にわたり連載した。
第1週では「グローバル化とSDGs~大学における自由とは~」と題し、同大学の活発な国際交流を紹介。また、このコロナ禍において「ピンチをチャンスに」と呼びかけ、学生の“自主性と責任”を説いた。第2週は「大人のための50箇条 テラゴロク(寺嶋語録)」として、自身の経験に基づいた人生訓を掲載。第3週と4週では、専門分野であるロボット工学についての講義を、授業時間に合わせた約90分の動画で発信した。第5週では「感染症の歴史-人間万事塞翁が馬-」と題し、人類を脅かしてきた感染症への理解を促すとともに「人間万事塞翁が馬」を例えに学生たちを励ました。
学生からは「テラゴロクに感銘を受けた」「『ピンチをチャンスに』という言葉に、大変な状況下でも何かを始めるチャンスとして前向きに捉えることに共感した」など多くの反響があり、「良き研究者・技術者である前に、良き人間であれ」と人間力形成を重視する寺嶋学長ならではの温かみのある講話シリーズとなった。
旭川医科大学
医療現場で防護具が不足する中、医療用エプロンを製作・活用
医療 感染対策 防護具
医療現場で使用する医療用ガウンなどの防護具は、全国的に供給不足が続いている。旭川医科大学でも病院における不足に備え、事務局各課職員の協力のもと、ポリ袋を利用した「医療用エプロン」製作に取り組んだ。
作業を始めるにあたっては、製作マニュアルや説明会により製作方法を周知。また、「3密」にならないよう図書館や実習室などの作業場所を準備した。初めのうちは不慣れなこともあり戸惑う職員も見られたが、徐々に慣れ始め、在宅勤務により自宅で製作する職員もいた。一丸となって作業にあたり、上下セットで概ね2,000組を完成させた。
製作したエプロンを医療現場へ配付するにあたっては活用してもらえるかどうか不安もあったが、評判が評判を呼び、「旭医エプロン」として高評価を受けることとなった。利用する部門から再依頼が届くなど、本取組がコロナ禍における病院運営の一助となったことに対し事務局職員一同、胸を撫で下ろしている。
今後も同様のケースが想定されることから、同大学では日頃より医療現場に耳を傾け、各職員が知恵を出し合ってコロナ禍を乗り越えられるよう対策を講じていくことを目指している。
東京医科歯科大学
バックヤードチームを結成、オールTMDU体制で難局と向き合う
医療 感染対策 患者対応
「知と癒しの匠を創造し、人々の幸福に貢献する」という理念を掲げる東京医科歯科大学。その理念に基づき東京に位置する医療系国立大学として新型コロナウイルス感染症に正面から取り組むことを使命とし、全学を挙げてコロナ禍の危機に挑んだ。
本年4月2日、東京都からの要請を受け、医学部附属病院で中等症・重症患者を中心に受け入れを開始。それにあたり、田中雄二郎学長の「患者を守る、仲間を守る」の合言葉のもと、オールTMDU体制でこの難局と向き合った。
具体的には、ICUの医師・看護師等の最前線に立つ病院スタッフについて、手術減少等で余裕のある外科医・研修医によるバックヤードチームを結成し、かつてない全学一体となった協力体制を構築。患者搬送から、診察室の清掃や医療ゴミの廃棄等のサポート、歯科医師の咽頭拭い液の採取、歯科技工士の3Dプリンターの転用によるフェイスシールド製作、精神科医の患者家族・医療関係者へのメンタルヘルスケア、リハビリ科のリモートリハビリ、基礎研究者のPCR検査への協力までを遂行。未曽有の難局に挑んだ取組は様々なメディアで取り上げられ、大きな社会的反響を呼んだ。
鳥取大学
紙製フェイスシールド「ORIGAMI(おりがみ)」を地元企業と共同開発
医療 感染対策 開発
鳥取大学医学部附属病院は、飛沫感染を防ぐ、紙製フェイスシールド「ORIGAMI(おりがみ)」を地元企業の株式会社メディビート、有限会社サンパック、ヤママスデザインと共同開発した。同院新規医療研究推進センターの藤井政至助教が医療機関の物資不足の現状を憂慮し、課題解決のため紙製のフェイスシールドを考案。地元企業の協力を得て発案からわずか2週間で製品化につなげた。
本製品は、ボール紙とポリプロピレン製のフィルムのみで構成されており、折り紙のように折って成形する仕組みになっている。フレームとシールドを一体構成とすることにより、完全使い捨てを実現。組み立てや処分の作業も容易にした。また、重量は約31gと軽く、締め付け部分がないため長時間の着用にも対応。N95マスクとの併用が可能で、マスクへの飛沫付着を防ぐことができる。
本年4月23日には鳥取県庁を訪問し、同製品の開発について平井伸治鳥取県知事に報告。鳥取県及び東京都へ1万枚ずつ、さらに感染者の多い神奈川県、千葉県、大阪府など全国に10万枚の寄付を行い、8月末までに33万2,400枚を出荷した。
この開発により、感染拡大地域で不足するフェイスシールドを低コストかつ素早く提供できることが期待される。
広島大学
PCR検査学内協力体制の構築~広島大学COV-PEACE-PROJECT 2020~
医療 感染対策 共同研究 PCR検査
新型コロナウイルスの感染拡大により、広島県は4月13日に「感染拡大警戒地域」とされた。これに伴い、広島大学では危機管理の一環として、霞部局連絡協議会から霞キャンパス(医歯薬系メディカルキャンパス)内の全研究室に対し、今後の流行時に備えたCOV19-PCR検査が実施できる組織を整備するための協力を要請。27研究室(71名)の協力を得て、新型コロナウイルスPCR検査学内協力体制を構築し、「広島大学COV-PEACE-PROJECT 2020」として4月17日に設置した。これ以後、広島県との間で受託契約を結び、行政検査を行っている。また、広島県「官学連携によるCOVID-19の検査研究体制構築事業」についても、本プロジェクトの主な研究室を中心に受託し、検査を実施している。
「広島大学COV-PEACE-PROJECT 2020」を中心とした学内協力体制により、新型コロナウイルスに対する予防ワクチンや治療薬の開発、感染状況把握の疫学調査、遺伝子解析、ゲノム解析等、医学・医療系の研究室が一丸となり、診断や創薬、対策、ウイルス学的研究等の取組を進めている。さらにAMED事業についても、複数の研究室が共同でチームを編成し採択され、現在、課題に取り組んでいる。
滋賀医科大学
教育、研究及び診療を維持するために、危機対策本部を立ち上げて多様な取組を展開
管理体制 運営体制 チェックアプリ
滋賀医科大学では、コロナ禍に対応すべく危機対策本部を立ち上げ、政府対策本部の基本方針や、文部科学省、厚生労働省、滋賀県等の施策等に基づき対応を協議、決定し、学生・教職員には、医療人として適切な行動を求めるため、「新型コロナウイルス感染拡大に係る注意喚起」としてまとめ、大学HPやメール(日本語・英語)配信により周知している。
危機管理や、学生・教職員の健康管理の一環として、毎朝の体温に加え、熱感、上気道症状、倦怠感、呼吸困難・息切れ、下痢、味覚・嗅覚の異常といった6つの症状の報告を義務化し、未入力を重ねた者には警告を発する「滋賀医大職員体温チェックアプリ」を構築している。発熱があった場合は原則として出勤・通学せず、管理者を通じて報告させて、その情報を集約している。
また、診療継続のため、小学校の臨時休校で勤務困難となった医療者向けには、院内に臨時託児所を設置したほか、新型コロナウイルス感染症患者(疑い含む)の身体・検体に接する医療者等を対象に危険手当を支給することとした。
大学事務職員も、夜間を含めた感染が疑われる患者受け入れ時の補助や外来患者案内の応援要員として、診療機能維持の一翼を担った。
人間文化研究機構
〈危機〉の時代に「人文知からのメッセージ」を多彩に発信
管理体制 情報発信 人文系研究
環境問題・資源枯渇・感染症など多くの困難がある中で、人類は地球上でいかに存続し、戦争・テロリズム・暴力・差別・貧困等に抗して、いかに共生していくのか。それらの問題を根源的に解決する鍵は、人間文化にある。
人間文化研究機構では、新型コロナウイルス感染症が全世界的な問題となっている中、人文知からのメッセージを一堂に集めた特設ページを本年4月から開設。機構を構成する6つの人文系研究機関の研究者が、それぞれの専門分野の立場から、人文知を見据えて発信したメッセージを掲載している(10月1日現在、23件の記事を掲載)。
また、「おうちでNIHUを楽しもう」と題し、同機構の研究機関が持つ展示施設のデジタル展示や所蔵資料を活用した「ジャパぬりえ」等も掲載して、「おうち時間」に楽しめるコンテンツの提供も行っている。
さらに、同機構が新しいタイプの研究者として養成している「人文知コミュニケーター」らによるWEB発信「くらしに人文知 ―コロナ時代を生き抜く―」もスタート。「人文学の研究者は何をすべきか」「研究と社会をつなぐ人文知コミュニケーターに今できることは何か」、そういった問いから対談などのコンテンツを発信している。
京都大学
感染症関連研究に対する助成制度を設け、11プロジェクトを採択
知的財産 研究開発 産官学連携
京都大学は、コロナ禍において産官学連携活動を通じた社会貢献をさらに推進するためのポリシーを策定し、その一環として、新型コロナウイルス感染症に関連する研究開発等を支援する助成制度を臨時に設置した。
具体的には、学内向けの研究開発助成プログラム(総額1億1,500万円)を設け、医理工系分野だけでなく人文社会系分野の研究も助成対象として、25件の応募中11件を採択した。また、知的財産について、パンデミックの終息に貢献するべく、新型コロナウイルス感染症の蔓延終結を唯一の目的とする研究開発に対して、知的財産を無償開放することとしている。
佐賀大学
WEBでオープンキャンパスと個別進学相談会を開催~スマホなどから大学体感、ライブ配信も~
入試広報 オンライン個別相談 オープンキャンパス
佐賀大学では、対面式のオープンキャンパスを中止し、新規に撮影した約80本の動画で構成するWEBオープンキャンパスサイトを作成した。実際に学内を訪れたかのような疑似体験ができる「バーチャルキャンパスツアー」では、360度を自由に見られる仮想現実(VR)の体感型ムービーを使い、文系、理系、医学系、芸術系の4つのコースを在学生目線で紹介。また、学部・学科紹介、大学ガイダンス、入試ガイダンスなどの動画を公開した。
本年8月11日にはライブ配信で、模擬授業、入試徹底解説、保護者対象説明会などの当日限定ライブイベントを開催するとともに、在学生や教員によるオンライン個別相談会を実施し、209名の相談があった。プレオープンの7月27日から8月11日までのWEBサイトへの新規訪問者数は、通常の対面式のイベントを大きく超える約8,500名に上り、九州以外の地域からも参加が多かった。
また、6月1日から、高校生・保護者からの質問・疑問にアドミッションセンター及び入試課職員が答える「オンライン個別進学相談会」を毎日実施し、9月末の時点で62名の申込相談を受けている。