63号 Challenge!国立大学 特集【みんなで支えるキャンパスライフ】

室蘭工業大学 東京外国語大学 電気通信大学  筑波大学 宇都宮大学 金沢大学 愛媛大学 宮崎大学

室蘭工業大学

室蘭工業大学カフェプロジェクトの学生参加による新たな学生支援・地域貢献のカタチ

「室蘭工業大学にカフェを!」というビジョンのもと、2019年 9 月、「室工大カフェプロジェクト」がスタートした。

ただコーヒーを飲めるだけのカフェではつまらないという考えから「学生参画+地域住民型」をコンセプトに、学生、教職員、地域住民等を含めたワークショップを実施。ワークショップにおけるディスカッションにより、「大学ならではの資源を活かす」「地域の様々な人と学生がつながるための活動 · 場をつくる」などのコンセプト「工大カフェ 8 箇条」を決定し、2021 年 9 月に「TENTO」がオープンした。

同カフェは、「つなげる、つながる」をスローガンに『人々が、語り· 学びあい、つながることで、地域の「好き」が増えていく社会』をビジョンとしている。TENTO の学生コミュニティとして「はんもっく」も結成され、同カフェでのイベント開催に関する企画や学生発表の場や地域交流の場を創出している。



【主な活動内容】
はんもっく企画イベント「大学生ってどんな感じ?」
高校生や地域住民等に、大学生の学業 · 私生活 ·アルバイ ト等の学生生活を紹介

生花体験ワークショップ
室工大小笠原流華道部との共同企画で、学生や地域住民で華道を通じた日本文化について交流



TENTO は、学生や教職員の福利厚生を基本とし、地産地消の食品提供及び食品ロス削減などの取組を行いつつ、学生や教職員との協働により地域コミュニティとの「つながり」づくりを継続している。

地域貢献を使命とする室蘭工業大学が TENTO を活用し、学生同士をつなげる機会創出及び地域の様々な課題を解決することが期待される。

「TENTO」の店内

生花体験ワークショップの様子


東京外国語大学

コロナ禍でみんなどうしている?~取材活動を通した学生の助け合い

東京外国語大学は、2021年春、「大学広報学生取材班」を新たに結成した。学生目線での大学の魅力を掘り起こすとともに、特にコロナ禍において、学生同士が助け合う場を提供できるのではないかと思い考案した。初年度は52 名の在学生が登録。インタビュー研修等を経て取材活動を進め、大学公式ウェブ広報サイト「TUFS Today」*を通じてインタビュー記事等を発信している。学内ワークスタディも兼ねており、原稿料等を支給しているのも特徴である。

2021 年夏には広報企画コンペを実施し、49 件の企画申請の中から「TUFS in New Normal」企画をグランプリに決定した。これは、コロナ禍により留学や様々な活動が制限される中、学生が行っている取組をインタビューしていく企 留学生座談会企画の様子
画。同大学の学生のリアルを伝えながら、世界の変え方を学生同士が共有できるとしてグランプリに決定し、担当する学生チームが取材を進めている。

コロナ禍で学生同士の交流の機会が減り、他の学生がどのように学生生活を送っているのか等の情報交換をし合う場が減少する中、取材活動を通して学生同士の新たな交流を生む機会となっている。他者の話に耳を傾けて同じ大学に通う他の学生の状況を知り、その多様性を発信することで、皆で学生生活を振り返りながら考える機会にもなることが期待されている。学生が取材し記事化することにより、学生同士ならではの話を引き出すことができ、他の学生の心にも響く記事を多く生み出している。

* 同大公式ウェブ広報サイト「TUFS Today」
https://wp.tufs.ac.jp/tufstoday/

「TUFS in New Normal」企画の取材インタビューの様子

留学生座談会企画の様子


電気通信大学

臨床心理士・学生メンター・アカデミックアドバイザー・看護師等の連携による学生支援

電気通信大学では、学生支援センターと保健管理センターが中心となり、学生メンターなどの協力を得て、学生支援の充実を図っている。

学生支援センターの「学生何でも相談室」では、年間2,500 件を超える相談を受付け、このうち1,000 件程度を常勤カウンセラーが対応している。同室は隔月で障害学生支援室及び保健管理センターのカウンセラー、医師、看護師等の専門スタッフと連絡会を開催して連携を図るほか、修学に関する悩みについてはアカデミックアドバイザーと連携している。同大学の主な活動内容は以下の通り。

学生メンター制度
学生 20名程度をメンターとして採用し、週 5日、学生の相談を受付け、年間150件程度の相談に対応。「学生何でも相談室」のカウンセラーがメンターの研修を実施してスキルアップを図っている。

アカデミックアドバイザー制度
名誉教授 2 名をアカデミックアドバイザーとして採用し、週3 日、年間 80 件程度の学生の修学の相談に対応。そのほか「学生何でも相談室」と協力して定期的に成績不振の学生や欠席過多の学生を抽出し、本人や家族も含めた個別対応を行っている。

ピアサポーター制度
学生をピアサポーターとして採用し、障がいを持つ学生が別室で授業を受ける際の担当教員との連絡や、身体障がいを持つ学生の学内の移動等をサポートしている。

コロナ禍における取組
学生スタッフを授業ごとに配置し、遠隔授業の技術的なサポートを担当教員や履修者に対して実施するほか、学生の対面イベント「勉強仲間をつくる会」を開催し、学生の所属ごとに学生スタッフを配置しコミュニケーションを図っている。

学生何でも相談室/障害学生支援室

「学生なんでも相談室」では、リモートでも相談を受付けている


筑波大学

学生の「やってみたい」を実現するプログラム~共創的コミュニティ形成による学生支援~

つくばアクションプロジェクト(以下、T-ACT)」は、学生と教職員が一体となって作り出す「共創的コミュニティ」を土台とした、学生が自らの関心に基づく多種多様な自発的活動を実現するための学生支援プログラムである。2008 年度文部科学省「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」への採択以降、継続的に実施しており、①学生が企画立案し展開する「T-ACTアクション」、②教職員が企画立案し展開する「T-ACT プラン」、③地域活動団体が実施する社会貢献活動に学生が自発的に参加する「T-ACT ボランティア」で構成される。地域活性化のための諸活動のほか、近年のコロナ禍においても、学生有志による入学式イベントの企画、 同大学の食料支援事業でのボランティアなど多様な活動実績を残している。

このような継続的な取組は、同大学の学生の起業マインドを支えていると考えられ、学生発ベンチャーの活動も盛んに行われている。2021年3月には、学生発ベンチャーである(株)World Life Mapping が開発したコミュニケーションツール「学生支援アプリ」について、同社の無償提供のもと学内利用を開始。コロナ禍により交流の機会が減少する中、学生同士がテキストチャットで情報交換できる機能などが学業や学生生活への意欲向上に活かされている。

学生の「やってみたい」を支援する同大学ならではの活動を通じて、自主性と社会性を備えて将来的に社会の課題を解決し未来を創り出す人材を育成していく。

T-ACTの展開と学生の成長イメージ

食料支援事業の運営に協力する T-ACT 参加学生(緑ジャンパー)


宇都宮大学

学生を誰一人取り残さないためのピアサポート活動:多様な学生のニーズに対応するために

宇都宮大学では、「誰一人取り残さないためのピアサポートを」を合言葉に、すべての新入生に手を差し伸べるためのピアサポート活動を2020年度から始めた。以来、新入生約 1,000 名とピアサポーターの在学生約 400 名とでグループ(1 グループ:新入生 5 ~ 6 名+ピアサポーター2 ~ 3 名)を形成し、オンラインも活用することで気軽な相談と交流ができる環境を構築し活動に取り組んでいる。個別の相談対応も行っており、多様な相談に対し柔軟かつきめ細やかな対応ができる活動形式を採っている。

また、ピアサポート活動を学生の立場から先導する存在として、約 10 名の学生がピアサポートリーダーとして活躍。リーダーたちは、ピアサポーターからの相談に乗るとともに、どのようなピアサポートが必要かを考え、より良い大学生活の実現に向け活動している。

こうした全学的活動が可能となったのは、コロナ禍以前からラーニング・コモンズ学生スタッフによるピアサポート活動が行われてきたことが大きい。日頃から学生生活の相談や学修支援、学びに関する情報発信を行っている学生スタッフは、これらの活動の経験を活かしピアサポートリーダーとしても活動することで、ピアサポートの定着に大きく貢献している。

このように、同大学では学生の熱意を原動力としてピアサポート活動を展開。学生からは、「今後も他の学生の困りごとに耳を傾け、解決策を考えていきたい」という声が聞かれる。学生同士で支え合い、より良い学びの場を創出するためのピアサポート文化が着実に浸透し始めている。


金沢大学

学生の主体的な取組を応援!世界と地域で学ぶ金沢大生をサポート!

金沢大学では、コロナ禍で地域や世界との交流が減少した学生に対し、様々な出会いの場を提供し、学生の主体的な活動を支援する2つの取組を開始した。

「Project: AERU(アエル)」は、2021 年度からスタートした学生の地域参加を後押しするプログラム。地域の魅力発信や新商品開発、文化体験などの多彩な体験型教育プログラムを実施し、これまで延べ 250 名以上が参加した。NHK 金沢放送局と連携し「地域に根差したテレビ番組づくり」をテーマに番組制作を体験するプログラムでは、石川県内で企画、取材・ロケ、動画編集といった番組制作の工 程を3カ月間体験しながら、自分たちのアイデアを形にした。その過程はドキュメンタリー映像としてテレビで放映された。

また、コロナ禍で停滞した派遣留学への機運を盛り上げようと、2020 年度に学生と職員との協働チーム「KaNOW(カナウ)」を立ち上げた。留学経験者や留学を考えている学生のアイデアと想いを活かし、よりリアルな情報が得られるイベントを企画・主催。「From Abroad!金大生の現地レポート」では、現在留学中の学生がキャンパスの様子やコロナ禍での留学準備等について紹介。「留学 × キャリア」イベントでは、留学経験を経て各界で活躍する若手社会人を招き、卒業後のグローバル人材としてのキャリアに留学経験がどのように活かされたかについて、先輩社会人による講演と座談会を行った。オンラインだからこそ可能な「今」と「これから」を知る企画に、多くの学生が参加した。

専門も強みも違う学生が集い、映像作りに想いを込めた

先輩からの熱いメッセージに心を燃やす参加者たち


愛媛大学

学生相互の「助けあい、教えあい、学びあう」力を高めるキャンパス・ボランティア

愛媛大学では、聴覚障がいのある学生に対し周囲の学生たちが草の根的に始めたノートテイクを嚆矢こうしとする「スチューデント·キャンパス·ボランティア( 通称「SCV」、全9団体)」と、大学院生が学部生の学習をサポートする「スタディ· ヘルプ · デスク(通称「SHD」)」の、計10団体(約 200名)が対面と遠隔のハイブリッドでピア·サポート活動を行っている。

同大学の学生支援は、支援を求める学生への直接支援に留まらず、ボランタリー精神を持つ学生を支援し、愛大生を間接的に支援する形態をとっている。そこには「ピア· エデュケーション」の効果も見られ、学びの場になっていると共に大学の活性化にも寄与している。

SCV/SHD は準正課教育※に位置づけられ、教職員や学内各部局と連携 · 協働しながら専用の活動スペースで取組を展開している。

2018 年に西日本豪雨災害が発生した際は、被災地でのボランティア活動に基づき『愛大生のための災害ボランティア活動ハンドブック』を上梓じょうしした。

SCV が設立されて以降、退学者数は減少傾向にあり、卒業予定者アンケートにおける学生生活全般に関する満足度は上昇傾向にある。また、SCV の活動要素を体系化し、2020年度から正課の授業(「相互理解を深めるコミュニケーション実践学」「相互学習を促す形成的フィードバック実践学」他)として開講し、一般学生のコンピテンシー涵養かんようにつなげている。

※準正課教育:卒業要件には含まれない、あるいは単位付与は行わないが、大学の教育戦略と教育意図に基づいて教職員が関与・支援する教育活動や学生支援活動のこと。

キャンパス中央にある活動拠点(左上)、対面と遠隔でのハイブリッド活動/支援(右上)、大学院生から学ぶ「SHD」(左下)、『愛大生のための災害ボランティア活動ハンドブック』(右下) 

愛媛大学の学生支援の概念(上)と活動団体の概要(下)


宮崎大学

学生グループによる地域PR動画作成(ツノタイムズ)~地域と大学の連携による学生支援~

人口約 1 万人の農業の町、宮崎県都農町で、同町を第二のふるさとにしたいという熱い想いを持った宮崎大学生による自主グループ「ツノタイムズ」が、町の魅力を広めるための活動を繰り広げている。町内で活躍する農家や獣医師、事業者などに町や仕事への想いなどを丁寧に取材したインタビュー動画を作成し、YouTube で配信。彼らの目下の関心事は、学生を中心とした都農町の関係人口の増加や地域おこしにある。「コロナ禍にあっても学生がソーシャルメディアを通じて都農町に興味を持ち、さらには同町を訪れ活動をする学生を増やしていきたい」と意気込む。

学生による地域での自主的な活動を継続していくためには、地域や大学の理解と協力が重要なカギとなる。その一方で、特に地方の大学が地域活性化や地域人材育成に大きな期待を寄せられる中、こうした活動を大学や地域が後押しする意義も当然ながら大きい。

宮崎大学は 2018 年に都農町と締結した連携協定のもと、同町がまちづくり推進のために設置した「つの未来まちづくり推進機構(以下、つの未来財団)」から寄附を受け、2020 年に医学部と地域資源創成学部に寄附講座を設置した。現在 4 名の教員が同町で診療や研究、学生の実習指導等の教育活動を展開している。「ツノタイムズ」も寄附講座の支援のもとで活動を継続しており、学生からは「学部を問わず、自由かつ必要な支援を受けながら活動できる寄附講座の存在はありがたい」といった声が寄せられている。

同大学と「つの未来財団」は、都農町で自主的に活動する学生やまちづくりに携わる学生の支援に引き続き注力していく。

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都農町で動画撮影をする学生メンバー