72号 Challenge!国立大学 特集【データ人材の育成】

北海道大学 北海道国立大学機構北見工業大学 東京大学 東京工業大学 お茶の水女子大学 電気通信大学 筑波大学 宇都宮大学 横浜国立大学 新潟大学 長岡技術科学大学 金沢大学 豊橋技術科学大学 滋賀大学 京都大学 岡山大学 宮崎大学 情報・システム研究機構(統計数理研究所)

北海道大学

大学院生による地域課題解決「共同研究型インターンシップ

近年、社会のさまざまな場面における課題解決では、DX の重要性が指摘されているものの、実際に DX を活用して課題解決できる人材は限られ、特に、北海道のような地方においては DX の知識を有する若手人材が少ない。一方、大学においては文理を問わずデータサイエンス教育を実施しているが、その知識を用いて実践的な課題解決を体験する機会はない。そこで、「課題解決DX 人材コンソーシアム」では、日頃の研究活動でジェネリックスキルとしての高い課題解決能力を有する大学院生が、データ解析の専門家である DX アドバイザーから DX 教育を受け、北海道地域の受入企業や自治体に「共同研究型インターンシップ」として派遣され、それぞれの課題解決に取り組む。
インターンとして派遣された大学院生は、実社会での課題解決にDX を活用して取り組むことにより、DX による実践的な課題解決を体験でき、自らの課題解決能力の向上とその応用、さらにはより広いキャリアパスへの気づきにつながる。一方、受入企業や自治体は課題解決における DX の効果を実感し、さらなる DX の利用につながる。

課題解決 DX人材コンソーシアム
https://phdiscover.jp/project/internship/


共同研究型インターンシップ概要


北海道国立大学機構北見工業大学

社会実践重視のカリキュラム・研究指導によるデータ人材育成

本学ではデジタル技術の活用による、社会実践を意識したカリキュラムや研究指導によって、データ人材の育成を図っている。

三大学連携による実践的教育の強化 
経営統合した三大学(本学・小樽商科大学・帯広畜産大学)間で科目提供を行っており、本学提供の「数理・データサイエンス科目」は、他二大学のデータ人材育成に貢献している。本学の実践的なPBL科目も、今後は三大学混成チームが社会的課題解決に取り組む科目へ拡張を図る。

研究組織との連携による実践的教育の強化 
一次産業や防災等へデジタル技術を展開できる人材を育成・輩出している。また、研究推進センター及び AI コモンズでデジタル技術を利活用する研究の一部を卒業研究等のテーマとして、実践的教育に活用している。産業界との連携による実践的教育の強化 北海道ではデジタルと半導体の、各人材育成推進協議会が発足した。各協議会を通して産業界から講師の派遣を受け、今年度は3つの授業で実践的教育を行う。

期待できる成果 
学生が実践的に社会的課題の解決を経験することで、卒業後もデジタル技術を利活用できるデータ人材が育成される。

数理・データサイエンス・AI教育プログラム
https://www.kitami-it.ac.jp/campuslife/kyouikukatei/mdashprogram/


東京大学

文理を超えた数理・データサイエンス・AI 教育による人材育成

本学では、情報理工学系研究科を中心に「数理・情報教育研究センター」(略称MIセンター)を設置し、数理と情報を横糸、応用展開を縦糸にして、数理的手法、統計的手法、データサイエンス(以下DS)及び情報技術の総合的な教育基盤を整備し、社会における課題抽出と解決、価値創造ができる人材育成を、様々な取組を通し実践している。

学外での取組
全国300以上の大学・高専からなる「数理・DS・AI教育強化拠点
コンソーシアム」を立上げ、その幹事校として教育の普及と人材育成に
努め、関東ブロック幹事校としてもワークショップ等を開催している。

学内での取組
多くの学生が履修する学部横断型プログラム「数理・DS教育プログラム」を設置し、「DS履修の手引き」で、文・理問わず学生がDSを身につけるための道筋を示している。さらに「DS・コモンズ」を設置し、学内の誰もがデータ分析相談できる場を提供している。

産業界との取組
UTokyo MDSコンソーシアムを設置し、産業界の要望の取りまとめと実践的な教育への支援、DSに関する成果の共創と活用の推進活動を行っている。

数理・情報教育研究センター
http://www.mi.u-tokyo.ac.jp/

 

 


東京工業大学

「共創型エキスパート」人材の育成

東京工業大学データサイエンス・AI(DS・AI)全学教育機構は、理工系総合大学である特徴を活かし、所属する学院の専門分野に依らず、①DS・AIを駆使し、②DS・AIで交わり、③DS・AIを教えることのできる「共創型エキスパート」人材の育成を目指す、学士課程から博士後期課程までの一貫した全学教
育プログラムを実施している。
大学院向けプログラム「エキスパートレベル」では、「基盤系科目」でDS・AI技術の理論を学び、「応用実践系科目」で技術の社会実装を学ぶ。「応用実践系科目」は、金融系・素材系・製薬系・IT系・自動車系など、幅広い分野の連携企業(45社)が講義を担当しており、産業界の各分野におけるDS・AI技術の活用や社会的課題の解決を学ぶことができる。
大学院向け新設プログラム「エキスパートレベルプラス」の「先端データサイエンス・AI(発展)第三」では、文理の枠にとらわれない幅広い視野を涵養し、トップレベルの研究者・技術者として社会で活躍する上で有用なDS・AI技術を幅広く修得すると 共 に、AI倫 理、情 報 法制 度、責 任 あるAIを実 現 するための技術を修得できるように設計されている。

データサイエンス・AI全学教育機構HP
https://www.dsai.titech.ac.jp


お茶の水女子大学

データサイエンス教育による女性データ人材の育成

文理協働のカリキュラムでデータサイエンスを学ぶ
お茶の水女子大学では、文系学生の興味の持ちやすさを重視して、文学作品などの人文科学を題材としたデータサイエンス科目を全学科目として開講している。
授業では、文化情報工学の目的に即して人文・社会分野のデータを用いることにより、統計的なものの見方や考え方を理解し、課題発見力および課題解決のためのデータ分析の実践力を身につけることを目的とする。
例えば、人文学の対象をデータサイエンスの手法で分析し、情報工学の技術と結びつければ、新たな文化や価値を創造することも可能となる。文学作品のテキストデータをデータサイエンスの手法で分析し、その結果を可視化して用語法などの文体の特徴を解明すれば、新しい文学の創生に役立てることができる。

期待できる成果・評価
文系学生や女子学生のデータサイエンス修得者の増加に貢献し、多様な学問・多様な産業への人材輩出を目指す。

数理・データサイエンス教育
https://www.cf.ocha.ac.jp/datascience/index.html

 


電気通信大学

デザイン思考を取り入れたデータサイエンス教育プログラム

令和5年度から情報理工学域Ⅰ類(情報系)および情報理工学研究科博士前期課程情報学専攻に「デザイン思考・データサイエンス(D×2)プログラム」(学士・修士一貫)を新設した。
AI技術が急速に進化する今、新しい技術で何ができるかをイメージすることは多くの人にとって困難で、専門家には職域を超え「何をするべきか」から提案することが求められており、本プログラムではデザイン思考を取り入れ、「どう作るか」だけでなく「何を作るか」から考えられる技術者を育成する。このために、座学のほか3つの特色ある実践学習を実施する。①データサイエンスのコンペティションを取り入れた学習(Kaggle講義)で、教科書通りにいかないケースも含め演習形式で学習する。②集中形式の実践演習で、実務家を外部講師に招き、膝を突き合わせて言語化できないノウハウも含めて学ぶ。③国内・海外と2度のインターンで、自分の大学を離れた場所での学びを実践する。
この実践の土台となる、情報理工のしっかりした基礎教育についても非常に重要であり、単科大である本学のメリットが最大限に活かされている。

電気通信大学 D×2プログラム Web サイト
https://dx2.inf.uec.ac.jp/

 


筑波大学

学生と企業実務家等が学び合うワークショップ型 PBL

筑波大学のデータサイエンス・エキスパート・プログラム(DSEP)の「MDAトップ人材養成特別演習」(2023年度~)では、全学の博士後期課程の学生向けに、企業等から提示された実課題やリアルデータを題材にワークショップ型PBLを実施している。博士後期学生がリーダーとなって企業等実務家とチームを構成し、データサイエンティスト、教員から助言を得る。昨年度は、配送システムの効率化、サポートデスク支援システムの作成、高齢者等の避難支援策などの案件が持ち込まれた。
現場の観察・ヒアリングから、課題の設定、データの収集と分析、アプローチの選択、解決策の提案までをチームで一貫して取り組むことを通して、それまでに修得したデータ分析力を実社会に適用するための卓越した実践力・総合力の涵養を目指す。

筑波大学の数理・データサイエンス・AI 教育
https://www.mda.edu.tsukuba.ac.jp/

 


宇都宮大学

データサイエンスで開く、新たな学問の地平

全学部対象の「文理融合型数理・データサイエンス教育プログラム(基礎コース)」は、「データサイエンス入門」、「データサイエンス基礎」、「実践データサイエンス」の3科目を中心に構成されている。学生はデータの収集、分析、解釈といった全般的なスキルを学び、理論的な知識と実践的な技術の両方を組み合わせ、実世界のデータを扱う際に直面する課題への対処法を修得する。全学生がデータサイエンスの基礎的なリテラシーを身に付けることで、自分の専門分野においても、より効率的にデータを理解し、活用することが可能となる。
さらに、各学部の専門科目で構成された「応用コース」では、7つの科目群(データサイエンス1・2、AI・機械学習、数学1・2、プログラミング、データサイエンス応用)の修得状況に応じて、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの各ランクを修了者に与え、データサイエンスに関する専門知識を有することを証明する。
また、新設されたデータサイエンス経営学部では、データサイエンスとマネジメントの複眼的な力を身に付け、それによって見出された新たな価値を、社会に実装するための実践的な教育を実施している。

宇都宮大学『数理・データサイエンス教育』
http://hae.utsunomiya-u.ac.jp/kiban/ds/index.html


横浜国立大学

経済学・経営学とデータサイエンスの融合による人材育成

横浜国立大学経済学部・経営学部は、社会ニーズに即した人材を育成するため、2021年4月からデータサイエンス教育プログラム(DSEP)を展開しており、学生の選択により5年一貫教育による修士号取得も可能となっている。
 DSEP-Econ(経済DSEP)では、1学年20名の少人数教育のもと、経済の専門性と統計分析能力の融合によって、政策立案やビジネス運営に秀でた社会データサイエンティストの育成を目指す。専門教員の配置による科目提供のほか、実践的な活用方法を学ぶ「データサイエンス・カフェ」の開催、企業との連携による「課外型データ分析演習」の実施により、キャリア形成を見据えた教育活動をしている。
 DSEP-Biz(経営DSEP)は、データ分析テクノロジーを課題解決や事業創造に活かす未来のビジネス・リーダーの育成に特化した教育プログラムである。徹底した少人数教育を特色とし、1年次から2名の指導教員がプロジェクトベースでゼミを行う。IT関連企業と連携し、実践重視のビジネス・リーダー育成教育を展開している。2024年 には、DSEP学生と教員の共同研究が学会にて大会優秀賞を受賞するなど、データサイエンス研究にも力を入れている。

経済 DSEP・経営 DSEP の概要
https://www.ynu.ac.jp/education/ynu_education/certification.html

詳細については、上記URL先ページからプログラム名をクリックしてご覧ください。


新潟大学

高学年を対象とした長期企業派遣型データサイエンス実習

新潟大学では、令和4年度より全10学部でデータサイエンス入門科目を必修としている。全学部生を対象にリテラシーレベル、応用基礎レベル、実践レベルの3つの数理・データサイエンス・AI教育プログラムを開設している。各プログラムの修了者にはオープンバッジを発行し、数理・データサイエンス・AIに対する学習成果を可視化している。

実践レベルの数理・データサイエンス・AI教育プログラム「データサイエンス」では、長期企業派遣型実習および事前・事後指導を実施している。実習参加学生に対して、派遣前に企業のデータサイエンス業務で必要な知識・技能を習得するための講義や演習を行っている。学生は派遣先でデータサイエンスを活用した業務内容の改善、新規プロジェクトの提案、新たなシステムの開発といった実業務課題に取り組み、期間終了後にその成果を発表している。実習後、学生の理解を深めるために事後指導で振り返り学習を行っている。

新潟大学 BDA研究センター HP
https://www.eng.niigata-u.ac.jp/~bda/


長岡技術科学大学

地域を巻き込む!初心者だからこその AI・データサイエンス

学生が「やらねばならぬ!」と思う教育環境を提供したい。本学では、学部大学院一貫教育であること、産業界と連携した技術開発が盛んなこと、これらを活かしたAI・データサイエンス教育を実施している。令和4年度の改組において、情報系に限らず全ての工学分野の学部生に「データサイエンス」科目を必修として課した。しかし、一時の受講では技能が定着しない。そこで、学部3年から大学院まで携わる「研究室(ゼミ)」を活用する。大学院の先輩がAIを積極的に活用していれば、後輩は大いに影響される。ただ、情報系ではない場合、AIの敷居が高いと感じてしまう。
このとき、IT企業と連携した大学院での「初心者向け」AI開発実習が功を奏する。大学では通常、月日をかけて学問を地道に積み上げる。ところがこの実習では、AIやプログラミングの事前知識がない学生に、2週間でAIアプリを開発させる。今の時代、それが出来てしまう。受講生からは「プログラミングの知識がなくても開発可能であることを知れた」、「AIの最前線の事例を学べた」とのこと。更には「今後の研究活動において役立つ」と。これで、研究室の先輩から後輩へAIの技能が伝授される。
学生がAIに興味を持てば、情報系以外の研究室でもAIにのめり込める。共同研究相手の企業はIT開発の経験はなくてもデータはある。学生は更に知識を深め、AIを活用した研究開発を自発的に進めていく。

ICT 実務演習の最終報告会を実施しました
https://www.nagaokaut.ac.jp/j/wise/report/2024-2-9

IT 企業と連携した初心者向け AI 開発実習


金沢大学

デジタルスキルを自動で「見える化」し、アワード付与

「金沢大学データサイエンス特別プログラム」は、学士課程の全学生を対象とし、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」に認定されている。数理・データサイエンス・人工知能(AI)の知識や基礎能力の修得状況を教務システムが自動集計し、その単位数に応じて「アワード」を付与し、教務システムの「ポートフォリオ」で開示している。
「アワード」は、卒業要件以外に学生が身につけた能力や資質を可視化する本学独自のシステム。本特別プログラムでは、数理・データサイエンス・AIに関する全534科目を対象とし、これらをリテラシーレベル、応用基礎レベルに分類して、アワードを付与する。リテラシーレベルでは、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナのランクを設定し、さらに進んだ応用基礎レベルの修了も判定する。学生は自身のアワードをいつでも確認でき、修了証をダウンロードできる。
これまでに、4334名がブロンズランク以上のアワードを獲得し、うち415名が応用基礎レベルまで到達しているデジタルスキルは、もはや特別な能力ではなく、使いこなせて当然の知識である。学生は自らの到達度を把握することで、さらに高度なスキルの獲得に意欲的に挑戦している。

金沢大学データサイエンス特別プログラム
https://note.w3.kanazawa-u.ac.jp/news/239

    

修了証              修了証を見せる学生たち


豊橋技術科学大学

先端アグリテック人材育成統合プラットフォームの整備

豊橋技術科学大学は、2008年から「IT食農先導士」や「最先端植物工場マネージャー」などの履修証明プログラムを開講し、先端施設園芸農業地帯である東三河に農業情報人材を養成、データに基づく農業生産力の向上に注力している。そして2022年から、Society5.0社会を目指す「農業×IoT×クラウド」人材育成の取組として、「先端アグリテック人材育成統合プラットフォーム」を整備した。
具体的には、コンテナ型人工光植物工場を基盤設備とし、工場内環境と植物生体の計測データをクラウド上に収集、IoT・AI基盤システムで機械学習を実行できる連携型プラットフォームを構築した。これを活用することで、植物栽培と農業生産プロセスの一連の流れを学内で経験するだけでなく、IoTデータを自動収集するクラウドシステムを構築し、データに基づいて分析・解析するスキルを学ぶことができる。

GIKADAI 数理データサイエンス AI 教育プログラム
https://cite.tut.ac.jp/ja/math-datascience/


滋賀大学

データサイエンス高度人材育成機能の強化

滋賀大学データサイエンス学部・大学院データサイエンス研究科は、国内最高水準のデータサイエンス教育研究拠点として、多様な企業等との連携のもと、高度人材育成と研究成果の社会実装に取り組んでいる。
本学は、国内最大級かつハイレベルなデータ活用人材育成機能を更に強化するため、10年計画を策定した。これは、2024年度以降、同研究科の入学定員を増員し、2031年度までに、博士前期課程では2023年度の40名から100名に、博士後期課程では3名から8名に拡大するものである。また、学部についても100名から150名へ増員、新たにAIイノベーションコースを設け、高等専門学校からの3年次編入制度も導入する。また、担当教員の更なる増員強化を図る。この取組みは、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の「大学・高専機能強化支援事業」ハイレベル枠に採択された。また、データサイエンス研究成果の社会実装を加速化するため、「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」による支援を受け、産学連携・研究力強化拠点となるイニシアティブ棟の新設を進めている。
滋賀大学は、こうした取組みを通じて企業・研究機関等との連携を深め、本学を介し協働するオープンイノベーション・エコシステムを構築、データサイエンス・AI領域の共創プラットフォームの中核となり、産業技術・システムの高度化など我が国の発展に貢献していく。

滋賀大学 HP
https://www.shiga-u.ac.jp/

イニシアティブ棟完成予想図(2024 年度完成予定)


京都大学

データサイエンス教育に情熱を注いでいる大学や先生方を支援

京都大学国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センターは、文部科学省事業「数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進」の拠点校・近畿ブロック代表校として活動している。近畿地方の様々な大学や先生方と連携しながら、データサイエンス教育についてアイデアやフィードバックを得ながら教育の普及と改善に取り組んでいる。学内では、学部教養・共通教育および大学院共通科目・横断教育科目においてデータサイエンスに関する科目を提供し、また企業の協力を得て課外授業データサイエンス・スクールを開講している。学部生向け科目「統計入門」については、その内容を教科書として発行するとともに、要約を学外からも視聴可能なMOOCとして公開している。また、(財)統計質保証推進協会と連携し、大学生・社会人向けのオンライン講座「京都大学データサイエンス講座」や企業ニーズに応じた教育プログラムを京大オリジナル社を通じて提供している。このほか、高校等への出前授業も要望に応じて実施している。

データ科学イノベーション教育研究センター
https://ds.k.kyoto-u.ac.jp/


岡山大学

デジタルネイティブの心に火をつける!

生まれたときからインターネットが身近にある世代「デジタルネイティブ」が増えてきている。デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目され、デジタル技術の活用で社会変革も始まっており、大学生、大学院生、若手技術者はそれを身をもって体験している。その若い世代に何を投入すべきか?現状の課題を熟知しその解決を志す世代とデジタルネイティブとの掛け合わせこそがデータ人材の育成に重要だと考える。この気づきはリカレント教育などを通じた【学生と実社会との接点】にあった。
岡山大学では、教育研究の組織と地域貢献の組織を立ち上げて活動をしていたが、学生がリカレント教育のTAとして社会人の演習を支援したり、ハッカソンで社会人と一緒にモノを製作する中で、社会人からリアルな現場の課題を聞き、それに興味をもち取り組み始めた。まさに学生らの心に火がついたのである。
自然発生的にデータサイエンス部(DS部)が設立され、数年で150名を超える学生、大学院生、教職員、社会人の間で情報が行き交い、デジタル技術やデータ利用が活発に議論されている。学生発のアプリアイデアや事業化アイデアも日々増殖し、学生ベンチャーも立ち上がっている。データ人材の育成には、新鮮な情報を入手するだけでなく、リアルな課題に取り組むアクションと実践の場が必要である。本学は、そのための最適な環境を提供し、仲間と共にチャレンジする文化の醸成を心掛けている。

岡山大学データサイエンス部(DS 部)
https://okadai-dsc.studio.site/


宮崎大学

デジタル人財育成の好循環を目指した宮崎の挑戦

宮崎大学では、県内の産学金労官が連携して、デジタル人財の育成とデジタル人財の好循環を目指している。
例えば、「宮崎大学データサイエンス・AI教育プログラム(基礎応用)」の受講を全学的に促している。また、身近に溢れている多様な情報をうまく収集し傾向を読み取り、デジタル技術を楽しみながら活用して競う「数理・データサイエンスコンペティション」を開催しているほか、企業でのインターンシップやAI開発や統計入門などのセミナーを含んだ「みやデジ・アカデミー」を開催し、データを活用して地域課題を解決することができる人材の育成を目指している。
令和5年度には、宮崎県デジタル人財育成コンソーシアムを設立。社会人向けリスキリング教育推進、高校生向けデータサイエンス科目の提供、県内大学へのデータサイエンス教材の提供など、宮崎県内におけるデータサイエンス普及・強化を図り、基礎的なデジタル技術を持ち合わせた人材を増やすことで、デジタル分野の裾野を広げることを目指して取り組みを進めている。
また、令和6年度には、大学院工学研究科「先端情報コース」において、実務家教員が中心となって講師を務める学内認定制度「エキスパートレベル」教育プログラムを開始。デジタル技術を用いて社会実装するとともに、デジタル分野を牽引することができる先端IT人材の育成も進めている。

数理・データサイエンス部門
https://www.miyazaki-u.ac.jp/miyazaki-mds/

コンペティションでのポスター発表の様子


情報・システム研究機構(統計数理研究所)

多面的なデータ人材育成の取組〜博士/棟梁/大学統計教員

社会全体でデータ人材の育成が急務であることを受け、<①博士研究者の育成>、<②棟梁クラスのデータサイエンティストの育成>、<③大学統計教員の育成>といった多面的な取組を行っている。

① 総合研究大学院大学の基盤機関として、全国に先駆けて1988年の開学以来、現在までに169名の博士学位授与者を輩出してきた。修了生の就職先は学術界が多く、産業界でも広く活躍している。

② 統計思考院において、2017 年度よりリーディング DAT を開講している。企業や大学教員・研究員などのハイポテンシャル人材を対象として、統計検定 1 級相当となる棟梁レベルのデータサイエンティストを養成してきた。

③ 統計数理研究所が中核となり全国29大学等が参画するコンソーシアムを形成し、「統計エキスパート人材育成プロジェクト」を開始した。参画機関より助教等の若手研究者を受け入れ、2021年度から5年間で30名以上の大学統計教員を育成する。

これらの取組により、日本全体のデータ科学/統計科学の学術研究と教育に貢献するとともに、大学や企業等におけるデータ解析の実践力の飛躍的な向上を目指している。

大学統計教員育成
https://stat-expert.ism.ac.jp