73号 Challenge!国立大学 特集【URAの活躍】
北海道大学
内閣府交付金のプレ・ポストアワード支援
内閣府地方創生推進事務局が実施する「地方大学・地域産業創生交付金」事業において、統合URA本部は本事業に自治体とともに申請する部局の構想立案支援を行っている。2021年度は、URA3名が水産科学研究院·函館市等と計画の構想案、事業の核の一つとなる大学改革·人材育成計画の企画立案など、多様な支援を行った結果、「函館マリカルチャープロジェクト」として採択された。事業の採択後も、本事業により2022年10月に本学内に設置された地域水産業共創センターの立ち上げ、及び運営メンバーとして、本部URA1名がポストアワード支援を実施している。
サポート例:
・地域水産業共創センターの運営サポート
・地域水産業共創センター特定専門職員の採用時に、統合URA本部において2週間のURA研修を実施
・CREEN人材育成プログラムの実施に向けて、新規に立ち上げた起業家育成演習や水産学演習の構築支援(講師をマッチング・コーディネート)
・本事業に関わる水産科学研究院教員の産学連携・外部資金獲得をサポート
https://u4u.oeic.hokudai.ac.jp/mission/collaboration-with-local-communities/
東北大学
URA活動の全学的研究支援に向けた取り組み
リサーチ・マネジメントセンターの機能強化:東北大学は、URA制度の定着、URA間の連携強化を行い、研究IR・研究力分析、産学官連携や外部資金獲得などの支援組織として充実を図ってきた。2023年からは機動的連携を前提とした学内一枚岩とするリサーチ・マネジメントセンター(RMC)として組織化し、研究データ等学術情報の利活用支援強化も図っている。
外部資金獲得支援を充実:RMCは研究力向上に向けた、研究IR・研究力分析の役割を担っており、それに基づいて外部資金獲得支援の充実に取り組んでいる。大型・学際的事業について、情報提供と提案意向調査を行い、事業詳細を把握する全学担当と、研究者に近い領域専門URA(部局担当)が連携し、研究者へのアクセス、提案構想、提案書作成といった支援を充実してきた。若手、外国人、人文社会科学の研究者向けには、科研費、JST創発、NEDO若サポなどの提案支援を実施している。また、2024年にはURAが主導して民間資金(寄附金)を活用した若手研究者の独創的な研究活動の伴走支援を開始した。
東京科学大学
大学統合に向けた両大学の融合研究の推進
2024年10月の東京医科歯科大学と東京工業大学の統合を見据え、両大学のURAを中心に協働し、研究交流のためのイベント開催及び研究ファンドの実施等に取り組み、新たな融合研究を創出するとともに統合に向けた機運の醸成に寄与した。
具体的には以下の3つのステップの企画と運営を行った。
1)マッチング機会の創出(研究マッチングフォーラム):79テーマのバーチャルポスターセッション
2)共同研究資金の支援(マッチングファンド):両大学による融合研究29チームを採択
3)研究成果の社会発信(研究成果発表・交流会):2024年4月に公開イベントを実施
イベントを通し気軽な研究紹介や交流の機会を提供し、互いの研究者について知る機運が高まった。また、その機運を点でなく継続的な取り組みにするために両大学からの研究資金の支援という形で新たな研究の種が育っていく一連の流れが実現できた。
統合後の東京科学大学においては、単なる医工連携にとどまらず、既存の延長線ではない新しい研究領域を生み出していくことを標榜しており、その最初の一歩の試みとして内外にアピールできる成果となった。
組織間での協業は調整や意思の統一が必要であり時間を要するが、URA同士がつながり主導することでスムーズな連携と短期間での成果実現につながった。
研究成果発表・交流会
電気通信大学
URAが牽引する若手研究者の成長支援
電気通信大学は次世代の研究者育成を重視しており、主専門分野の卓越性に基づき他分野の研究者と協働しイノベーション創出を牽引する人材(本学では「研究インテグレータ」と呼んでいる)の輩出を目標に、博士号取得直後の若手研究者に安定した研究環境を提供する任期付助教制度など、さまざまな成長支援策を実施している。
本学ではURAがこれらの支援策の中核を担い、若手研究者に寄り添った支援を行っている。例えば「UEC若手研究者キャリア支援制度」では、URAが財源調達から企画運営まで一貫して推進し、研究費や在外研究支援の強化、研修会実施などを行う。また、学内交流プラットフォーム「COMPASS」は、多世代研究者による異分野交流で広い視座を養う機会を創出しつつ、若手研究者の孤立を防ぐ狙いもある。
これらの活動を通して、多様な経験を持つURAが若手研究者と積極的に交流し、外部資金獲得、産学官連携、社会実装など、多面的な支援を実現している。制度面の充実にとどまらず、URAが研究者に寄り添い、顔の見える支援で若手の成長促進を支えている。
茨城大学
URAから「UA 」へ─専門職の組織実装
茨城大学では、2015年にURAを登用し、当初は主に外部資金の申請のサポートなどの研究支援の業務を担当していた。やがて、研究によって得た幅広い知識、ニーズを敏感にキャッチする感覚、プロジェクトのコーディネート力を発揮し、一定の裁量を持って業務に取り組むように。現在では、企画・戦略と現場の実務とをつなぐ重要な役割を果たし、大学運営に貢献している。
そこで今年4月、戦略にも関わるURA等専門職人材を「UA」(University Administrator)と捉え直し、その機能を組織的に実装化して柔軟かつスピーディーな大学運営を進めることを企図して、UA(University Administration)オフィスを新たに開設。URAや広報などの専門職が各専門性をベースにしつつも柔軟な形で兼務するネットワーク型組織で、大学運営にとって重要なタスクごとに適宜メンバーを招集し、大学執行部とともに戦略の策定やプランニングを担う、学内のシンクタンク集団のような存在だ。
最近は、URAが書籍の監修や、学外機関の研修講師・専門委員を務めるなど、自身の経験やスキルを社会へ発信・共有することにも取り組み、博士人材・専門職人材を生かした組織運営モデルを社会に広める役割も果たしている。
筑波大学
トランスボーダーな大学づくりの総合支援
筑波大学URAは、国境・研究分野・業種のボーダーを越えて国際社会に貢献する研究の活性化と人材育成を総合的に支援している。本学は13の海外大学とキャンパス機能を共有する「Campus-in-Campus(CiC)」システムを有し、2024年には24の総合研究大学が加盟する「Worldwide Universities Network(WUN)」にも参加した。パートナー大学のURAとも協力し、新しい研究プロジェクトの創出や国際共同研究の発展のため、研究者マッチングや国際ファンドの獲得支援を行っている。2020年のコロナ禍には、本学の学際的な総合知を結集する「知活用プログラム」を立ち上げ、医学・人文社会・計算科学・芸術等多岐にわたる27件の研究プロジェクトを支援した。URAが制度設計や成果の迅速な発信を行ったことで、研究者間の連携を促進し国際的な協働にもつながった。現在も、「幸多き人生100年時代」をテーマに総合知の活用を支援している。2021年に開始した「大学×国研×企業連携によるトップランナー育成プログラム TRiSTAR」では、URAが主体となって、専門深化力・俯瞰力・マネジメント力の3つの力を備えた「トランスボーダー型研究者」の育成を支援し、若手研究者の課題や国内外の調査に基づく、講座・イベント等を企画・提供するとともに個別伴走支援に取り組んでいる。
横浜国立大学
中規模大学の強みを生かした幅広い研究支援
シニアURA1名及びURA5名(2024年9月時点)が、約600名の研究者に対して研究活動サイクルに沿ったさまざまな支援を展開している。多くの活動は研究推進機構にて企画・実施されているが、経営戦略本部や附属図書館にもURAが配置され、高度専門人材として支援活動を行っている。
主な活動としては、まず、論文や外部資金等の分析により研究活動状況を把握し、研究戦略立案に必要なエビデンスを提供している。定量化が難しい研究活動についても分析手法を検討し、研究力評価指標の開発に努めている。
また、学生を含む外部資金獲得初心者から大型資金獲得を目指す研究者まで、ニーズに応じて、セミナーの企画・開催、申請書・プレゼン資料のブラッシュアップ、模擬面接等を実施している。
さらに、研究者マッチングイベント(研究∝縁結び企画)の開催、YNU研究拠点やYNU国際ネットワークハブ事業を通じ、研究連携を促す場の提供とグループ形成を支援している。
そのほか、オープンアクセス推進や、 ウェブサイトの英訳、国際プレスリリース発信など、研究情報を世界に向けて発信している。
新潟大学
UA(高度専門職人材)による大学機能強化
教員の研究や活動の成果を社会にプロデュースし、大学機能の多角化と実質化、さらには大学経営を推進するために高度専門職人材(University Administrator)の強化・拡大を行う。UAを現在の10倍規模、事務職員の10%にまで増員することを目指す。
UA室に所属させ、全学的見地から戦略的に採用・育成・評価・活躍を大学執行部の下で推進する。外部登用だけではなく、ポテンシャルのある人材の獲得・育成を強化する。連動する事務職の高度化に向けた複線型人事制度改革も進めている。
https://www.niigata-u.ac.jp/university/facility/management/ua/
UA制度では、大学経営全体に関わる高度な専門性と経験を有する人材を組織化
UA職と事務系職の協働及び育成・キャリアパスシステム
信州大学
UA、URA、UEA、IRerと大学司令塔による改革推進
地方創生や大学改革の課題解決には、教育・研究・社会貢献等の大学機能を組織横断的に融合する取り組みが必須だが、従来の縦割り組織では困難だった。そこで、組織的な大学改革を効果的に実行するため、学長直轄の総合司令塔組織:アドミニストレーション本部(AHSU)を設置し、UAやURA等の多職種の高度専門職人材を図表のように配置した。AHSUでは学長のリーダーシップの下で課題や情報を集約して抜本的解決シナリオを構築したうえ、多職種専門職が連携したトータル伴走支援により、大学経営戦略に基づく課題解決を進めている。その効果として、2023年度にはJSPSの地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)やJSTのスタートアップ・エコシステム共創プログラム等へ選定され、課題解決活動を加速している。
北陸先端科学技術大学院大学
URAの産学官金連携活動による地域活性化
URAによる地域ニーズ・シーズ調査(訪問活動)
本学の産学官連携活動のベースはURAによる直接的な訪問活動である。これまでに約1600社・機関のデータベースを構築し、地域活性化のためにこのデータベースを活用し、本学のほか、他機関とのマッチングを推進する「Matching HUB」を開催している。
「Matching HUB(展示会形式の産学官金連携オープンイノベーションイベント)」
URAによって、地域の産学官金のニーズやシーズを集約し、出展者同士のマッチングにより新製品・新事業につながる「種」を数多く同時に創るコンセプトに基づくシステムである。これまでに金沢で10回開催し、毎年500以上の新製品・新事業の「種」を創ってきた。
能登半島地震復興支援(URAによる復興支援活動)
URAが復興支援タスクフォースを立ち上げ、被災された地域企業のニーズ調査を実施し復興支援に取り組んでいる。能登地域の復興を目的としたMatching HUBの開催に向けて活動を推進している。
名古屋大学
URAがデザインする「探索型共同研究」
名古屋大学学術研究・産学官連携推進本部(以下、学術産連本部)では多彩な共同研究メニューを備え、企業経験豊富なURA等を擁して、企業ニーズを踏まえた産学連携の企画調整を行っている。中でも「探索型共同研究」は、組織的共同研究のテーマ創出等をURAが主体的に企画し、企業と学術産連本部が直接共同研究契約を結んで実施する。本共同研究を入口として、より大型の共同研究メニューへのステップアップが目指される。
本共同研究においてURAは、研究領域の提案、研究分野の整合性や教員のモチベーション等も考慮した参画教員の探索、候補教員との面談マッチング、新規大型共同研究創出(「指定共同研究」化等)への企画調整等を主体的に遂行する。その進行には、企業と教員双方の立場を尊重しつつ、大学全体の利益を実現する粘り強い調整力と企画力、高い専門性を発揮することが求められる。
三重大学
三重大学URA制度の整備による研究推進支援の強化
三重大学では、研究戦略の策定をはじめ、研究プロジェクト等への学内資源の再配分による集中投入や次世代研究の発掘など、学内の研究マネジメント体制の抜本的な強化を行うため、2024年度より研究・社会連携マネジメント機能を統合させた「研究・社会連携統括本部」を新設した。その中で、学内で取り組む多様な研究活動等で創出される価値の最大化を目指し、資源導入の戦略立案及び多様な研究活動の支援を実行するための統括機能を担うURA室を創設した。新たに配置するURA職員の採用に当たっては、全国的にURAの課題となっている「安定処遇の確保」、「雇用の確保」、「育成を視野に入れた人材確保」を考慮し、教員や事務職員等と同様に、将来の幹部候補にも就任可能なキャリアパスの整備を行った。
幅広く効率的に業務を担う専門人材を配置するURA室の創設、及び学術研究活動を幅広く推進し、研究・教育活動の向上に貢献するURA職員の配置は、研究者が研究に専念できる研究推進支援体制の強化に加え、経営にも携われる人材登用を視野に入れたキャリアパスを導入することで、本学の研究戦略推進につなげることが期待される。
京都大学
URAの育成と研究支援のグローバル展開
高度専門職人材としてのURAの育成
京都大学学術研究展開センター(KURA)は、独自のURA研修プログラムを提供している。新任URAは、講義、eラーニング、On the Job Trainingを通じて、研究支援に必要な知識とスキルを習得する。2024年度からは、創造的マインドセットを養い、個人の価値観と組織のビジョンを調和させる「コンパス研修」も開始している。
東南アジアとの連携による高度専門職人材の育成
京都大学ASEAN拠点を中心に、2018年より、東南アジアの省庁・大学・研究機関等の研究支援者と連携し、オンライン勉強会などを実施している。
また、東南アジアの省庁・大学等と共同申請したトヨタ財団のプロジェクトでは、カンボジア・タイの研究支援者に対してインターンシップの機会を提供することで、高度専門職人材を育成している。海外においても、現地の研究者やURA等の支援者が一丸となって課題解決に取り組んでいるのが京都大学の特徴である。
https://www.kura.kyoto-u.ac.jp/support/tsunagari/jinzaiyousei/
大阪大学
URA×IR活動による研究力強化支援
大阪大学経営企画オフィスでは、研究者に伴走して研究者の肌感覚に合った支援を行うURA(University Research Administrator)活動と、大学の強みや弱みをエビデンスベースで分析するIR(Institutional Research)活動の有機的結合(URA×IR活動)を進めている。その特色の一つは、経営企画DXシステム“ReCo”をエンジンとしている点にある。“ReCo”は、学内外に点在する経営力・研究力に関するさまざまなデータを収集・統合することで、高度な分析・可視化を実現するシステムであり、データを踏まえた意思決定に活用されている。
また、事務職員を経営企画オフィスに配置することで、教員をメンターとしたOJT型の経営人材育成も実施している。
URA×IR活動の実践と経営人材の育成により、分野横断プロジェクトの創成や研究者の研究時間確保を進める。
鳥取大学
人口最少県とっとりを活気づける医工連携
鳥取大学では、2014年より医学部附属病院 新規医療研究推進センター所属のURAが中心となり、ユニークな地方版医療機器開発拠点の形成を進めてきた。地方大学の強みを生かし、全国のさまざまなステークホルダーとの連携の下、10年間で27品目を製品化した。本取り組みを踏まえ、本学の医学部・工学部・農学部を連携させる学際連携は、大学の教育改革や企業との大規模連携の基盤にもなっている。
① 共学講座
医療機器開発を志す企業人材のリカレント教育の場として大学病院を開放し、企業人と医療人が共に学ぶ「共学講座」を開講。本講座から企業との共同研究を多数立ち上げ、医療機器開発を出口まで導く。
② 医工農連携
医工農連携によるヘルスケア領域に役立つ研究開発を仕掛け、企業連携に向けた基盤を形成する。
③ 全国ネットワーク
地域・分野の垣根を越えてつながるネットワークを形成。積極的な情報発信の下、全国の大学・企業・行政機関との連携を進める。
共学講座:臨床現場見学会の様子
鳥取大学版医工連携のスキーム
岡山大学
法人・大学経営を担う高度マネジメント人材
2012年に始動した岡山大学URAは、いち早く「支援人材」ではなく、「高度専門人材」として組織化、運用した。教員のURA兼務や企業からのシニア人材が「落下傘」としてURA組織を束ねるのではなく、学長が直接グリップする極めて珍しい運用を実施。さらに若手人材の登用を積極的に行い、30代で本部長職や副理事職などに充て、要職をURAが担う体制に。加えて研究部門以外の総務・国際・経営力強化・学事などの副理事や副学長にもURAを登用。「研究しか知らないURA」ではなく、研究部門を熟知し、それを法人・大学経営に生かす、全国の大学では例を見ない先導的取り組みを実施している。
さらに地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)の研究大学として、“岡山大学のURA”ではなく、“社会・地域を担うURA”を実施。さまざまな肩書を持つことで、大学と社会・地域の双方の知と人材の流動を高め、相互の共創・振興を強化促進する新しい形のURAのあり方を実施中。URAの運用は大学組織・制度改革、地域共創へと波及している。
(産学官IR) (国際) 副理事長職(研究) 本部長職(学術)
副学長職(総務)
本部長職(研究IR) 本部長職(産学官) 本部長職(機器共用) 2024年度着任(学術情報)
岡山大学URAメンバー ( )は担当職
広島大学
J-PEAKS拠点支援を基軸とした研究強化の取り組み
広島大学は、2023年度に地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)に採択され、世界的に稀少な紫外線領域の放射光による物質の可視化を通じて、重点拠点である半導体・超物質、再生・細胞医療・創薬の融合研究領域を中心に研究力向上に取り組んでいる。本事業において、URA、産学コーディネータ、知財マネージャー等から「ブースターチーム」を構成し、基礎研究から社会実装までを切れ目なく支援している。URAはこの支援を先導し、融合研究領域への重点的な取り組みが次なる投資へとつながるよう、アリゾナ州立大学等を参考に、拠点収益化モデルや知的財産の技術移転に伴う経営資源獲得スキームの確立を目指している。
広島大学 J-PEAKS 実施体制図
徳島大学
異分野融合の活性化と実証研究の推進
徳島大学では、弁護士、弁理士、メーカー出身の実務家教員等、多様な専門性を有するURAを確保し、社会課題解決に向けた研究推進/産学連携活動を一体的にサポートしている。
以下、特徴的な取り組みを紹介する。
異分野融合の促進「kundara(くんだら)-innovation」
教員、学生、社会人など、多様な参加者がグループワークやディスカッションを通じて、異分野、異業種の壁を越えた新たな関係性の構築につなげる交流会を定期開催。有機的なつながりからイノベーションを生み出すことを目指す。
“ものづくり”基軸の実証研究「ものづくり未来共創機構」
大学で創出された研究シーズの実証研究を進める産官学連携のハブ拠点として、民間や自治体が持つものづくりの「現場」、「現物」の実践的な知見を取り入れ、現実的な「ものづくり」と「実証研究」を推進。
高知大学
〜社会とつなぐ、教職員をつなぐ〜
九州大学
研究者との関係づくりを重視した知財発掘活動
研究者の研究成果を権利化・実用化するための知財マネジメント等の業務を、大学100%出資子会社の「九大OIP株式会社」に委託している。同社では、専任の知財コーディネーターが研究者一人一人から研究内容をヒアリングし、知財の権利化や実用化についてディスカッションを行っている。特に、これまで発明申請を行ったことがない研究者を中心にヒアリングし、新たな知財の発掘につなげている。
ヒアリングは、直接研究室へ訪問して実施するため、一度に訪問できる研究者の数は限られるが、研究者との関係づくりを重視しながら、研究成果を適切に権利化し、さらに実用化するまで長期間にわたってサポートすることを目指している。
2023年度は64件の研究室訪問を行い、「知財について相談できる窓口がわかってよかった」や「自分の研究が知財創出につながることがわかってよかった」等、好意的な声を多く受け取っている。訪問後、研究者から知財の相談をされることが増え、将来的に特許権の取得や共同研究、ベンチャー創出等の増加が期待される。
佐賀大学
オールラウンド型URAの育成戦略
本学のURA(シニアURA2名、主任URA1名、URA2名)は2019年設立のリージョナル・イノベーションセンターに所属し、科研費等の競争的資金の獲得や、民間企業等との共同/受託研究の推進、技術移転による研究成果の実用化等を支援する。近年、研究関連業務が多様化し、基礎研究から社会実装まで一貫支援が可能な、オールラウンド型URAの育成に注力している。この利点はURAが研究者の専門分野や研究テーマ・フェーズ等を適切に把握した上で俯瞰的な支援を実施し、効率的な支援と研究者との信頼関係の構築が図れることにある。下図は直近5年間の「特許権実施料収入」及び「企業・地域及び自治体からの相談件数」の推移であり、各々の成果が増加している。
また、大型案件支援では、未利用資源の革新的転換技術開発に係るフューチャー・リソース推進プラットフォーム、九州シンクロトロン光研究センターの専用ビームライン活用の新素材創出推進プラットフォームに、シニアURAを配置している。
特許権実施料収入 企業・地域及び自治体からの相談件数
大分大学
研究力強化に向けたURA室の新設と取り組み
大分大学では2022年度にURA室を設置し、同室を中心に外部研究資金の獲得・管理から研究成果のアウトリーチまでに至る研究支援活動を幅広く推進することにより、大学の研究力強化を目指している。主な取り組みは以下の通り。
1. 科研費を含む外部資金の獲得実績の向上
科研費獲得セミナーの開催や科研費等の各種の助成金に応募する教員の相談対応・応募書類の添削などの支援を進めている。
2.一気通貫型の支援による社会実装の追求
知的財産のライセンスアウトや大学発スタートアップ設立も視野に入れ、研究シーズ発掘・研究資金獲得・知財含む成果の創出・スタートアップ設立まですべてのステップにURAが伴走支援する一気通貫型の活動を推進している。
3.文理横断型研究プロジェクトの企画推進とアウトリーチ支援
大分大学では防災・減災を重点研究分野の一つに掲げ、自然災害時の被災者の健康リスクに関する文理横断型の研究プロジェクトを推進しており、URA室では同プロジェクトのマネジメントや研究成果を発信するシンポジウム・展示会(写真)開催等をサポートしている。
琉球大学
琉大URAは、人と人をつなぐ大学のプロデューサー
異分野融合研究のプロデュース
琉球大学URAは2015年2月に活動を開始し、さまざまな業務に従事してきた。その中で、本学の特色ある研究分野である「熱帯・亜熱帯」「島嶼・海洋」「琉球・沖縄文化」「健康・長寿・国際感染症」などを基に、実績データから研究者を抽出し、研究プロジェクトの支援や新たな融合分野の創出を進めている。
例えば「サンゴ礁生物」×「再生可能エネルギー」から「Blue & Green Revolution拠点」、また「琉球列島の人類ゲノム」×「琉球諸語」から「言語系統樹研究」が誕生した。さらに、「生活」×「農業」×「サンゴ礁」から誕生した「水の環プロジェクト」では、URAがつなぎ役となり、文理の研究者や地域社会と連携して超学際的な研究を進めている。
なお、これらは現在も進展しており、それぞれのプロジェクトをプロデュースしたURAが、メンバーとしても活躍している。
総合技術部のプロデュース
琉球大学では、研究環境とその支援体制の向上にも力を入れており、その一つが、分析機器の共用化推進である。その過程で、機器を扱う技術職員は一つの組織に所属し、持てる技術を効果的に発揮できる体制の必要性を認識し、URAの支援により、総勢84名の総合技術部を発足させた。今後もURAと総合技術部は本学の研究力向上に協働していく。
2023年10月1日に開催した総合技術部(琉大iTec)発足式