英国研究評価制度REF及び社会的インパクト評価に係る講演会「大学における社会的インパクトとは? ―英国の事例に学ぶ―」を開催(1/20)
お知らせ
国立大学協会は2022年1月20日、英国大学協会(Universities UK)及びイングランドの研究費配分機関であるResearch Englandとの共催で、「英国研究評価制度REF及び社会的インパクト評価に係る講演会『大学における社会的インパクトとは? ―英国の事例に学ぶ―』」をオンラインで開催しました。
令和4年度から始まる第4期中期目標期間において、各国立大学は社会的なインパクトを創出するために効果的な取組を分析し、その戦略的な強化に取り組むことが求められており、英国の研究評価制度であるREF(Research Excellence Framework)が、そのモデルケースの一つとなっています。そのため、本講演会は、REFの目的・考え方や、研究による社会的インパクトの評価方法、大学における把握及びステークホルダー等への適切な説明方法などの事例提供を通じ、国立大学における取組の在り方に資することを目的として開催されました。当日は、50大学約200名以上の参加があり、関心の強さが窺えました。
講演会は、政策研究大学院大学の林隆之教授の進行により進められました。
まず、第1部として、開会挨拶では、牛木辰男国立大学協会国際交流委員会委員長(新潟大学長)からの、REF及び社会的インパクトを理解する意義を含んだ挨拶に続き、David Sweeney, Research England会長から、REFの概要説明と日本でのシステム検討に資することへの期待が述べられました。
続いて、「日本の研究評価に係る背景と現状」として、政策研究大学院大学の林隆之教授から、日本における大学評価の状況と新たな展開について説明があり、今後、日本において検討すべきこと及び英国から学ぶべきことについて言及がありました。
続く第2部の「REF(英国研究評価制度)概要説明」においては、「REFの概要」として、Catriona Firth, Research England研究環境部次長から、社会的インパクト評価のプロセスや評価体制及びインパクトの定義等の説明があった後、「REFインパクト事例の評価」と題して、Naren Barfield王立美術院副学長・プロボストから、パネルメンバーとしてインパクトケーススタディを評価した経験から、具体的な評価作業の流れについて発表がありました。
第3部の「英国大学からの事例紹介」においては、「インパクト事例-社会的・経済的インパクトの実証」として、Taeko Wydellブルネル大学健康・医療・生命科学部教授及びNeil McDonnellグラスゴー大学知覚経験哲学研究センターLKASフェローから、理系と文系それぞれの研究者としての立場から、自身の研究に関連した社会的インパクト構築に係る経験について事例発表が行われました。
次の「REF及び社会的インパクトの戦略的価値に関する大学の視点」では、Anthony Hollanderリバプール大学研究担当副学長から、REFは強みを持つ分野の特定やベンチマークを行うのに有益であることや、研究や研究支援活動が活性化・高度化する契機となることなど、REFの戦略的な価値について紹介がありました。続く「評価プロセスに関する大学の視点」においては、Rose-Marie Barbeauグラスゴー大学研究インパクトマネージャーから、REFに係る人材等の体制整備や大学全体で取り組むことの重要性について、また、「研究インパクトの活用」においては、Matt Flinders, University Policy Engagement Network議長から、学術的卓越性と社会的インパクトは両立すること、そしてREFのシステムは、社会に貢献するという科学者の使命を果たすために重要なものである旨の説明がありました。
第2部と第3部での説明を踏まえたパネルディスカッションでは、インパクト評価の制度設計や大学内の体制整備、また、ケーススタディ作成時の作業負担や研究分野によるインパクトの違い等について、活発な意見交換が行われました。
閉会挨拶では、山口宏樹国立大学協会専務理事から、今回の講演会は英国に学ぶ形であったものの、今後、日本独自の社会的インパクト評価を設計し、日英が互いに学び合えるようになることへの期待が述べられました。
また、Janet Beer英国大学協会国際政策委員長から、REFのシステムは変化を遂げており、変化を推進していくことで世界トップクラスの研究に繋がっていくこと、さらには、対面での開催が困難の中でもオンラインにより知識を共有できたことの意義が強調されました。
社会的インパクト評価は、日本の国立大学にとって初めての経験となりますが、本講演を通じ、大学が持つリソースを社会に効果的に打ち出していくことの意義と課題、そして、学内の体制整備等について、検討する有益な機会となりました。
国立大学協会は今後とも英国の大学団体等と協力し、互いに有意義な交流事業などを計画していく予定です。
【プログラム】
【開会挨拶資料】
【説明資料】
【発表資料】
牛木国際交流委員長による開会挨拶 | David Sweeney, Research England会長 |
モデレーターを務めた | Catriona Firth, Research England |
Naren Barfield王立美術院 | 第2部パネルディスカッションの様子 |
Taeko Wydellブルネル大学 | Neil McDonnellグラスゴー大学 |
Anthony Hollanderリバプール大学 | Rose-Marie Barbeauグラスゴー大学 |
Matt Flinders, University Policy |
第3部パネルディスカッションの様子
山口国立大学協会専務理事からの閉会挨拶 | Janet Beer英国大学協会 |