身体に障害を持つ人が将来の進路の選択を考える上で、その障害ゆえに、大学等への進学の道を狭められてきた現実があった。このことは、大学で学ぶために必要な支援・援助が十分でないことへの不安によるものである。ここ数年来、大学への入学者が多様化してきており、この多様化傾向の一つとして、様々な障害を持つ学生がふえてきていることがある。身体に障害を持つ入学者の増加に伴い、各大学でも様々な支援・援助体制がとら始めているが、多くの課題を抱えているのが現状である。本調査結果からも分かるように、その障害には、運動障害(肢体不自由、脳性マヒや交通災害の後遺症など、聴覚障害(聾や難聴など)、視覚障害(盲や弱視など)、健康障害(病・虚弱)や言語障害(構音障害や吃音など)があり、障害の種類・程度も多岐にわたっている。このように障害は種類・程度も多様であり、それぞれの大学だけでは、支援援助の体制に限界がある部分もあると考えられる。この現状に照らして、第3常置委員会では、各国立大学の現状と課題を実態調査し、経験を交流すると共に、今後に必要な課題を提起することとした。この間の経緯は以下の通りである。
平成12年5月12日の第3常置委員会の継続課題の審議の中で、「身体障害学生の学習の環境整備について」が取り上げられ、7月14日の同委員会作業委員会で国立大学に対してアンケート調査を実施することが決められた。その後、佐藤保第3常置委員長の下で、東京大学学生部の協力を得てアンケート案が作成され、9月14日付けで「国立大学における身体に障害を有する者への支援等に関する実態調査について(依頼)」が、各国立大学長宛に送られた。9月29日を期限とするアンケートに対して、全国立大学より詳細なコメント等を添えた回答が寄せられ、身体に障害を有する学生等に対する学習環境の整備・支援について、各大学が深い関心をもっておられることを実感した。東京大学学生部によって集計した結果は、11月2日の第3常置委員会で報告され、同委員会において、集計結果の整理・分析と今後へ向けての提言について愛媛大学に原案の作成を依頼することが決められた。これに基づき、愛媛大学では、教育学部障害児教育講座のメンバーを中心とするワーキング・グループを設置し、原案を作成し、2月9日の第3常置委員会に提出した。この原案に対する第3常置委員会委員の意見を集約し、整理・修正の上、取りまとめたのが本報告書である。
本報告書をまとめるに当たって、ご退官の日まで第3常置委員長として中心となって努力された、佐藤保お茶の水女子大学長、アンケートの作成から集計にご苦労をかけた東京大学学生部の方々、集計結果を分析し原案を作成された愛媛大学のワーキング・グループの方々をはじめ、関係各位に深甚の謝意を表したい。
この報告書が、各大学において、身体に障害がある人々が、大学で学ぶ機会を広げるための支援・援助体制の構築への参考となり、また、各層の広い議論の下で、国の施策に反映されることを期待している。
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