◆ 資 料 編

2. 各大学よりのコメント

〔質問事項 2−W〕
 身体に障害を有する学生の、卒業・終了後の教員採用試験において、これまで生じた問 題
 回答 4大学

(茨城大学)
 全盲者の教員採用試験に際し、本人は普通学校(中学)の教員を希望していた。県教 育委員会に相談したところ、特殊学校(盲学校)であれば特に問題はないが、普通学校の 教員としては教育指導上の視点から問題(例:板書の問題等)があるので不適とされるや り取りがあった旨、伝え聞いている。
(金沢大学)
 教員採用試験受験者なし
(熊本大学)
 平成10年3月卒業生で、教員採用試験に不合格後、県職員に合格、採用された
(琉球大学)
 1次は合格しても、2次は合格しない。また、2次に合格してもなかなか採用までい たらなかったが、最近の事例として、全盲の卒業生が教員の採用試験に合格し、盲学校の 教員として平成12年4月に採用された。

〔質問事項 2−X〕
 身体に障害を有する学生の教育についての意見や考え
 回答 24大学

(北見工業大学)
 教育の機会均等の原則に基づき、可能な限り受入体制を整えたい。
(茨城大学)  
 身体障害者が抱えている障害の程度・質はそれぞれ相当な違いがあり、事前にはなか なか想定しにくい部分も多い。受入側としては障害者本人の希望を聞きながら、ケース・ バイ・ケースで対応を考えていくべきであろう。
 視覚障害者1人当たりにつき、文部省がどれだけの費用を交付しているのか、また点 訳のための機器、ソフト等の購入の費用は経常費とは別に交付されるのか、チューターを つけることは可能なのかを少なくとも入学時に明示して欲しい。
 このような費用の金額やそれを要求する手続きが大学によって違いすぎる。ある大学 では視覚障害者の入学と同時に自動的に支出されるが、別の大学では担当教官が予算獲得 に走り回らなければならず、その時間と労力が無視できないし、いつも成功するとは限ら ない。
 大学院のゼミで使うテキストや関連書籍の点訳にかかる必要をまかなえるだけの予算 をつけて欲しい。さもないと、その費用が一般の研究費を圧迫するので視覚障害者の今後 の受入を難しくする。
(図書館情報大学)  
 本学では、他大学と比較して学生1人あたりの教官数が多く、身体に障害を有する学 生に柔軟な対応が可能である。
(埼玉大学)   
 本学には聾学生が在学しており理学部では化学を学んでいる。大学における聾学生に とっての最大の問題は、大学においては講義の重要度が、入試の試験勉強とは比較になら ないほど高い、ということである。当初、教官側は“板書を多くすること”および“他の 学生のノートを見せてもらうこと”で対応できると考えていたが、本人から、“リアルタ イムで話を理解できなければ講義に出ている意味が無い”との申し出があり、ノートテイ クのボランティアグループによる対応を準備している。  
 “講義をその場で理解すること”の重要性に関しては、学生本人も、受験段階で認識 していなかったようである。
 一般に、障害を持ちながら大学入試に成功するためには、健常者以上の熱意と努力が 必要であることは明らかであり、彼らに十分な環境を整えることは大学側の努めと考え る。
 聾者に化学を教えることの意義については教官の意見は必ずしも一致していないが、 これは大学卒業後の進路を危惧する思いに基づいている。この点は障害者自身が、高い専 門能力を実証することが最良の方策と思われる。
(東京商船大学)   
 本学が船舶職員の養成を目的とした大学というイメージが強く、これまでは身体に障 害を有する者からの相談はない。しかしながら、船舶職員の養成を目的としない分野も有 していることから、受け入れ体制の整備が必要と考えている。
(長岡技術科学大学)   
 教育、研究活動を障害者に一般学生と同様に行うためには、施設、設備等の整備は当 然充実する必要があり、また、教育面についても障害者の程度等も十分考慮して、教官、 事務及び学生等も含めて一体となって対応する必要がある。   
 単位認定の方法等教育面でも対応について考える必要がある。
(山形大学)  
 (人文学部)学部としては、可能な範囲でできるだけ配慮を行い、身体に障害を有す る者が教育を受ける機会を確保したいと考えている。しかし、21世紀の社会を展望した場合、これらの学生に対する学習支援は、個々の教員や学生間の善意やボランティア精神 に依存する時代は過去のものであり、特に、障害の質・内容・程度等に対応したきめ細か な学習支援体制の確立(例えば、高度難聴者に対するノート・テイカーの配置等)に向け た公的な財政支援の確立が急務と考える。その意味で貴委員会がこのような実態調査を実 施されていることに敬意を表したい。   
 (工学部)専門分野の技術者を育成することを目的とする大学の工学部において、障 害者には分野に応じて教育的な種々の困難がある。  
1)専門分野の選択    
 当工学部では聴覚障害者を受け入れている。この場合、聴覚による判断が技術上重 要な専門分野の場合、必然的にその受け入れには困難が伴う。そのような分野に障害を持 つ学生が希望したときには、その学習は困難であることを学生に納得させることに多くの 時間を費やす。障害者の中には強い権利意識を持つ学生もおり、教育を受ける権利を強く 主張する場合がある。    
 しかし専門分野によっては、障害により希望技術の取得が困難なことがあること を、大学にはいる前に十分に認識し、技術の習得が可能な分野を選択することが、大学で の学習効果を上げ、障害者が真に自立するために必要である。
2)補助者    
 聴覚障害者の場合、会話による意思疎通が困難な場合が多く、講義形式による授業 の場合には、それが学習の大きな障害となる。大学に入学する以前に会話あるいはそれに 変わる意思疎通の技術を身につけることが好ましい。もし、その段階に達していないとき には、大学においてそのような技術を取得する必要がある。
 また、そのような障害者にも必要なら大学卒業まで障害者との会話そして勉学をサ ポートする専門の補助者が必要である。
(筑波大学)   
 別紙(身体に障害を有する学生に対する学習補助に係る取扱いについて)のとおり。
(東京芸術大学)   
 障害の程度によっては、教育内容に大きな影響を及ぼすことも考えられるが、可能な 限りの態勢・配慮を心がけている。
(信州大学)
 授業等の特別配慮を含め、今後検討する必要がある。
(岐阜大学)   
 身体障害者の受け入れ・教育については、障害者本人の教育は勿論のこと、一般学生 の障害者に対する理解・教育にもなることであり、積極的に対応すべきと考えます。
(名古屋大学)   
1. 肢体不自由の学生で、筆記に時間がかかり、時間内に解答ができないため、学習 の理解力を計るための小テストの実施が困難であった。  
2. 身体に障害を有する学生の教育体験から、このような学生を受け入れる学部等に は、当該の学生をケアするチューターなど全学的に予算の配慮が必要である。  
3. 身体に障害を有する者に対しても、障害を持たない者と同時に教育を受ける権利 を有すると言う基本原則にたって、可能な限り対応をしている。当然のことであるが、必 要な補助設備が整い、教官の綿密な研究指導があるという条件の下では、学習能力につい て他の学生とまったく同等の能力を発揮できるはずである。また、このような学生が混 じっていることが正常な状態であり、他の学生の勉学の障害と言うよりは、むしろ良い影 響を与えるものと考えている。   身体に障害を有する学生が学習の効果をあげるには、人、補助設備の面でのサポート 体制を欠くことができない。大学内における障害者本人に関する物理的な補助設備につい ては、必要に応じて一定の対応がなされることが多いが、同様に重要なのは次の3点であ る。   
 第1は、人的サポート体制である。これは、指導教官の負担増に関する配慮と学習・ 通学などをサポートするグループの適切な組織にわかれる。特に、後者に関しては、当初 はボランティアもありうるが、数年に及ぶ通学を支えるためのサポート・グループを維持 するためには一定の資金的配慮も必要になる。   
 第2は、大学内における障害者本人に関する補助設備を有効に活用するには、大学に おける補助設備に対応でき、互換性を持つ設備を自宅と指導教官の研究室にも設置する必 要がある。このための一定の資金的配慮も必要である。   
 第3には、現行では補助設備が高価であることが多く、財源の面での制約が大きい。 大学は研究開発を通じてこのような補助設備の低廉化にも努力すべきではないだろうか。
(愛知教育大学)   
 教育機会均等の原則・平等の原則からいって、ソフト面での学習支援体制の早期の確 立が望まれる。
(名古屋工業大学)   
 講義室棟にエレベーターが設置されていないため、2階以上の講義室で開催される講 義が受講できない。講義室等にエレベーターの設置は必要と思われる。
(大阪大学)   
 本学には、昭和中期に建築された建物が未だ残っており、身体障害学生に物理的に完 全には対応できない建物が残っている。また、エレベーター棟を建築するにあたっても敷 地がないため建てられない現状にある。   
 また、教育等においても全学の身体障害学生を受け入れる体制にはなっていない。現 在行われていることは、当該学部に障害を持つ学生が入学予定の時点で要望に応え整備している状況である。従って、学内の障害学生が在学する区域と在学しない区域には整備に 差異が生じている。   
 これらの問題について、大学の諸委員会において、各部局のみの対応ではなく大学全 体として及び、地域全体での対応について検討しつつある。
(神戸大学)   
 身体に障害を有するものが入学することはできても、卒業後国家試験(例えば医師国 家試験)の受験資格上制限を受けるといった制度上の矛盾が解消される必要がある。
(神戸商船大学)   
 現在該当する学生はいないが、対応について検討しておく必要はあろう。
(徳島大学)   障害を有する学生の教育は、今後積極的に推進していくべきものと考えます。障害を 有する学生と一般学生がともに授業に参加する中で、一般学生の障害を有する学生に対す る理解も深まると思われます。   
 また、そのことは障害を有する人に対する偏見や差別をなくし、障害を有する人と共 生する社会が求められることからも重要であります。
(高知大学)   
 本学では、肢体不自由のための車椅子を恒常的に使用しなければならない学生が平成 8年度に入学したため、就学環境及び支援体制を整えてきた。当該学生は、平成12年3月、本人の意欲、家族の介助、大学側の環境整備等により4年間の修業年限をもって卒業 させることができた。   
 今年度は、入学後の病気のため全盲となった学生が、10月に復学することになり、 次の事項を中心に整備を行っている。  
1. 障害の程度及び訓練の進捗状況に応じた柔軟な履修計画の指導  
2. レジュメ・資料・参考図書の点字化を計り、また、介助者の同席、盲導犬の立ち入 り等の許可の実施  
3. 「教官による支援委員会」、教職員・学生によるボランティア組織による支援体制 の確立  
4. 施設・備品の整備として、附属図書館に点字資料室を設け、音声パソコンや高速点 字プリンターを設置した。(点字資料室は、大学開放の一環として学外の視覚障害の方々 への開放を検討している。)   
 また、学内の点字ブロックの補修と拡張、エレベーター・教室等への点字シール表示 を行った。  
5. 以上の整備費は、学内経費(学長裁量経費及び学部通常経費)で対応した。今後、 ボランティアの学生への支援の検討が必要である。
(大分大学)
 学習支援の方法が確立されていない。
(大分医科大学)   
 本学を受験した「身体に障害を有する学生」は、平成10年度に1名いるが、入学者 選抜試験の結果不合格になっており、これまで入学者の実績はない。
 今後、身体に障害を有するものが入学した場合は、障害の種類や程度によって修学上 や施設使用上の不便が起こらないよう特別措置を論じたり、施設を整備するなど支援をし たいと考えている。
(鹿屋体育大学)   
 本学は体育大学としての特殊性から身体障害者(突然死からの見地による心疾患を含 む)であるものの入学の実績はありませんが、在学中に下半身が麻痺になった学生の在学中に、身障者用のスロープ、トイレ等の施設を設置しておりますことを申し添えます。
(琉球大学)  
 @経費 A支援体制 B専任の教官 の必要性   
 どちらも現行では不十分です。受入れについては、組織的な取り組みと恒常的支援体 制を作る必要があります(全学的)。   
 受験上の協議については障害の度合が軽く申請され、入学後問題が起こる例がある。
(奈良先端科学技術大学院大学)   
 本学は、スロープ、エレベーター、トイレ等設備が整っており、また学生窓口や保健 管理センターでの相談体制もできている。教育に関してはそれぞれの分野で特色があるの で、実情に沿って対応するようにしている。

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